クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

マツダの第6世代延命計画は成るか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/7 ページ)

» 2021年01月25日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 さらにいえば、燃費モードがWLTCになったことによって、ダウンサイジングターボがあまり燃費向上に役に立たなくなってきた。特に北米マーケットは4気筒エンジンをバカにしているところがあるので、本来は6気筒が欲しい。世界のCO2規制が厳しさを増し、ダウンサイジングターボがトレンドからこぼれ落ちていく中で、マツダはどうしても3リッター級の6気筒エンジンが欲しい状況を迎えた。

 こういう状況下で、従来の常識でいえば、V6ユニットへ流れそうなものだが、マツダは直6を選んだ。それはまたコモンアーキテクチャーの影響でもある。直4と直6は、吸気や燃料噴射の数理モデルをある程度共有できるのだが、V6となるとモデリングも解析もゼロからやり直しである。それには膨大なコストがかかる。マツダが直列4気筒の基礎研究をそのまま当てはめられる直列6気筒を選ぶのは当然の流れでもあった。

 となると、長い直列6気筒は横置きFFと相性が悪すぎ、当然縦置きFRシャシーということになる。つまり4気筒系FF用のスモールシャシーと、4/6気筒系FR用のラージシャシーへと、大きく分割されることになる。ならば、コモンアーキテクチャーも上下に2分割して、それぞれに最適化すべき。生産台数的にもそれは理に適った流れであった。

 しかしCAFE規制のロードマップを考えれば、直近数年以内には、この6気筒クラスもハイブリッド(HV)化あるいはプラグインハイブリッド(PHV)化は避けられない。幸いFRはスペース的にメリットがあるので、バッテリー搭載には有利である。そういう結論のはずだった。

 しかし、MX-30のEVモデルを開発してみて、マツダは思い知ることになった。「EVの設計に必要な要素を理解していなかった」。その内容は明確には語られていないが、基本的にはバッテリーの冷却に必要なノウハウだと考えられる。そしてそれが判明した時にはすでにFRシャシーはある程度開発が進んでおり、問題点の解決のためにはFRシャシーの開発を一度ご破算にするしかないことが判明したのだ。

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