ところが今回のBALMUDA The Cleanerは、バルミューダが手を付けてこなかった空調家電や調理家電以外の領域で「新ジャンルの商品を開発すべきだ」という社内の声から開発が始まった。今までは「やりたいこと」をやってきたが、クリーナーは同社として初めてビジネスの流れを考え、「やるべきこと」として開発した最初の製品となる。
では、なぜ「新ジャンル」の開発にあえて取り組んだのか。
バルミューダという家電メーカーの特徴ともいえるのが、その成長スピードの速さだ。同社の前身となる有限会社バルミューダデザインでは、元々ノートPC用の冷却台やLEDデスクライトを開発しており、09年時点の売上高は4500万円ほど。その後、10年に会社名を「バルミューダ」に変更して家電分野に参入した。このとき開発した扇風機のヒットにより、同年売上高は一気に2.5億まで押し上がる。その後も売上高はジワジワと伸び、15年には扇風機や空気清浄機などの空調家電分野だけで約30億の売上高となった。
さらに15年、BALMUDA The Toasterで同社初となるキッチン家電分野に参入。これがさらなるヒットとなり、翌年16年の売上高は50億を超え、その後もジワジワと売り上げを伸ばし、18年には当時の目標だった100億円のボーダーラインを突破する。どちらにも共通しているのが、空調家電やキッチン家電など「新ジャンル」への挑戦をきっかけに売上高が飛躍的に伸びた点だ。
バルミューダは、10年に空調家電分野へ、15年にキッチン家電分野へと、5年ごとに家電の新ジャンルで製品を投入してきた。20年はまさにこの節目の年というわけだ。
しかし「社長が欲しいものを自由な発想で作る」というこれまでのバルミューダの魅力は、今回のBALMUDA The Cleanerで行った「ビジネスありきでの開発」で損なわれてしまわないのだろうか。
この問いに、寺尾社長は「『やりたいこと』は自分の願望しかないが、『やるべきこと』は自分の願望も入れつつ、自分たちの置かれている立場や周りの環境も視野に入れることだ」と答えた。BALMUDA The Cleanerの開発に関しても、もちろんバルミューダらしい自分視点は捨てていないという。
寺尾社長は「誤解を恐れずに言えば、お客様のために自分の欲望を捨てて製品を開発する手法は、個人的には比較的やりやすいと考えている」とする。一方で、バルミューダという会社は自分視点を貫きつつ、同時に人を喜ばせるというのが会社としてのミッションであると断言。このスタンスを捨ててはバルミューダを作った意味がないとコメントした。
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