イベント開催までのスケジュールは図表2のように半年をかけて行った。社内の撮影に当たっては、セキュリティや防犯上の観点から、どこまでを公開するかも含め各担当部署と調整を重ねた。
「オンライン開催のためにシステムを作るにも、要件定義などの準備が必要です。また、社内の撮影にもどこからどこまでを見せてもよいか。オンラインで社内の様子を公開するリスクもありますので、見せ方には関係各部署で相談を徹底して進めています」(大野氏)
バーチャルツアーの移動感を出すことは重要だが、映像が防犯上の問題にならないよう、安全性と臨場感をどう両立させた演出にしていくか苦心したという。
そのかいあって、参加者の満足度は高かったそうだ。事後アンケートの結果は、例年の8割程度から9割以上に上がったという。
「最近入社された方からはオフィスの様子が分かるという声や、毎年参加されている方からは、今年はやらないと思っていたけど、やるということでよい会社だと思った、など、の声をいただいています」(大野氏)
ファミリーデー以外にも、スマイルプロジェクトではイベントを開催している。2020年度の社内イベントは、感染対策として基本的にオンライン開催で行った。
毎年7月に開催している七夕イベント「SummerNight」は、浴衣での出社を可能として、社内カフェテリアで縁日パーティを開催しているもの。昨年はオンライン開催で、楽天が支援している東京フィルハーモニー交響楽団による演奏会や抽選会を行った。
また8月にはフィットネスイベント「スマイルスタジオ」もオンラインで開催した。
「クロスフィットトレーナーのAYAさんを講師に招いて15分ほどのトレーニングに挑戦するイベントです。有名な講師の方に指導してもらえるということもあって約500組の従業員とその家族が参加しました。翌々日まで筋肉痛になったけども運動不足になりがちだったのでリフレッシュできたなど、とても好評でした」
このように、多くのイベントがオンライン開催となったが、社内からは好評の声が多いという。
「この状況下だからこそ、イベントを実施したことを評価してもらっていると受けて止めています。社員からは、在宅勤務が続くなかで『自分は楽天社員なのだろうか』と思う瞬間もあったという声も聞いています。オンライン開催という形ではあっても、オンラインだからこその工夫を取り入れ、なるべく一人一人を大切にするメッセージを出したいと思っています」
スマイルプロジェクトの担当イベントは、今後も基本的に年約7回を継続していくという。大野さんは「コロナ禍だからといって社内イベントを減らすことはありません」と断言する。人数や予算もオンラインでも維持しており、さらに1回の規模についても参加人数を増やすなど、規模を大きくしていく方向性だ。
オンラインが増えるなかでのイベント運営の課題としては、社内への広報をあげる。
「オンラインイベントでは『誰かに誘われて行く』ということは少なく、自分で参加したいという明確な意思をもっていなければ参加してくれません。その分企画にコンテンツ力がなければいけないと考えています。ファミリーデーにおいても、2020年はどう参加者を集めるかを考え、告知期間も例年以上に長くとりました」(大野氏)
また逆に、オンラインだからこそ強化できる部分もある。地方勤務者からも、オンラインだからイベントに参加できたと喜ぶ声も出ている。
以上、楽天のファミリーデーやコロナ禍のなかでの社内イベントについて紹介した。感染対策のため、従来通り行えていない施策もある。しかし、これまで培われた「楽天主義」を土台に、この状況だからこそできる取組みを生み出し続けている。
(2020年11月下旬取材)
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