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満足度が8割→9割に! 初のオンライン開催、楽天の社内イベント「ファミリーデー」が成功したワケ工夫は?(1/2 ページ)

» 2021年02月12日 07時00分 公開
[人事実務]

 本記事は『人事実務』(2021年1月号)「特集 社内コミュニケーションとカルチャー共有」より「事例2 楽天」(20年11月下旬取材)を一部抜粋、要約して掲載したものです。

 当該号の詳細はこちらからご覧いただけます。

 イノベーション創出を重視し、多様性とオープンな企業風土でも知られる楽天。今回は、昨年9月12日、9月13日に初のオンライン開催となった「楽天ファミリーデー2020」について紹介する。

photo 社内を見渡せるバーチャルツアーを企画

<会社概要>

 ●社名:株式会社楽天

 ●設立:1997年2月

 ●事業内容:インターネットサービス等

 ●従業員数:2万53人(19年12月31日現在、連結、使用人兼務取締役、派遣社員およびアルバイトを除く)

 ●本社:東京都世田谷区玉川1丁目14番1号楽天クリムゾンハウス

イノベーションを生むカルチャー作り

 まず、楽天のカルチャーに関する全社的な方針をみていこう。

 コーポレートカルチャー本部エンプロイー・エンゲージメント部長の日高達生氏(正しくは「高」は、はしご高)は、「楽天は『イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする』という企業理念を掲げ、『グローバルイノベーションカンパニー』として、世界基準の革新的なサービスを生み出していくことを目指しています。その実現のため、イノベーションとオペレーションが両立できる組織風土作りに力を入れており、その一環として、行動指針『楽天主義』を掲げてグループ内での共有を徹底しています」と説明する。

 さらにこの「楽天主義」は、事業をとおして実現をめざす価値観「ブランドコンセプト」と、楽天グループ一人一人の「楽天の目標」への共感度を強め、実現度を高めるための「成功のコンセプト」の2つからなっており、グループの根幹をなす基盤となっている(図表1)。

 創業当時にわずか6人だった企業がグループで2万人以上の従業員を擁するグローバル企業に成長するなかでは、いかに価値観を共有するかが重要になる。そのため全社的な社内公用語の英語化をはじめ、多様な人とアイデアがオープンに行き交うダイバーシティーに富んだ職場環境を整えることを大切にしている。

photo (図表1)楽天主義

完全オンラインで開催された2020年のファミリーデー

 では、具体的に2020年のファミリーデーの開催・運営についてみていこう。

 楽天では、ファミリーデーを2007年から開催している。従業員の家族や友人に日ごろの感謝や働き方、楽天の職場環境、新しい取り組みを伝えるため、例年社内ツアーをはじめ、さまざまな企画や催しが行われている。前回の2019年には、子ども向けプログラミング教室や東京フィルハーモニー交響楽団の楽団員による楽器体験、フォトスポットの設置などが行われ、1184組の従業員とその家族が参加した。そして完全オンライン開催となった昨年は、938組の従業員とその家族が参加した。

従業員を笑顔にする「楽天スマイルプロジェクト」

 ファミリーデーの運営を担当しているのは、総務部門内に2015年に発足した組織「楽天スマイルプロジェクトチーム」である。

 総務部スマイルプロジェクトチームの大野あゆみ氏はこのチームについて、「『従業員が笑顔になって、満足度高く働ける職場を作ることで、お客さまの満足度も上げられる』というコンセプトで社内イベントの企画・運営に特化している組織です。総務部のメンバーで構成され、定期的に社内向けのイベントを実施しています」と説明する。

 スマイルプロジェクトでは年約7回のイベントを行っているが、ファミリーデーはそのなかでも一番人気のイベントだという。

 昨年の楽天ファミリーデーのテーマは、「楽天クリムゾンハウスの今を家からのぞいてみよう!」となった。

 「楽天も感染対策として原則在宅勤務を続けており、会社にそもそも行けていないという状況です。一方で、ステイホームによって、家でテレビをつける機会は増えるなど情報が入りやすくなった環境ともいえます。そこで、会社はどうなっているのか、自宅からのぞいてみるのも面白いのではないかと考えました」(大野氏)

 また、出社時に仕事をするオフィスでの感染対策は十分なのだろうか、という家族の不安に対して、社内の感染対策の様子を見てもらい、安心してもらうという狙いもある。

臨場感を伝えるバーチャルオフィスツアー

 具体的なファミリーデーの実施方法としては、バーチャルオフィスツアーを設けた。

 楽天本社の執務エリア、カフェテリア、またダイナー(レストラン)などの福利厚生施設を360度パノラマカメラで撮影し、参加者は、このバーチャルオフィス上を移動して、オフィス内の様子を見ることができる。また、各箇所には企業ヒストリー動画を設置したり、クイズラリーを設けたりするなど、子どもも楽しんで回れるよう工夫も盛り込んだ。

photo 執務エリア。詳細情報や動画を見ることができる
photo カフェテリアでは、提供しているお弁当などを紹介

 「例えば執務エリアであれば、現在のオフィスは壁のないオープンなレイアウトとなっています。これは過去に部門間の壁がコミュニケーションを妨げたという反省があり、二度と繰り返さないという決意を形にしたものでもあります。このように、なぜいまのオフィスがこうなっているのかを伝える工夫をしています」(大野氏)

 ダイナー(レストラン)をはじめ、これまでのファミリーデー開催時には、公開していなかったスペースもバーチャルオフィスツアーでは回れるようになっている。

 また、カフェテリアは現在、感染対策のため通常営業ではなく、出社する従業員のためお弁当形式で昼食のみ提供している。バーチャルオフィスツアーでは、これらのさまざまなお弁当も紹介されている。規模は縮小しているが、ベジタリアンメニュー、ハラル対応メニューの提供も続けられている。

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