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» 2021年02月24日 07時00分 公開

ジョブ型とはジョブを定義することではない “人の出入り”前提の競争原理の働くエコシステムだ雇用管理(1/2 ページ)

ジョブ型への移行を巡っては、批判や懸念も多い。しかし「ジョブ型の本来の姿に照らすと、さまざまな誤解もある」と、マーサー ジャパンの取締役執行役員の白井正人氏は話す。ジョブ型の本質とは。

[リクルートワークス研究所]

 現在、日本で起こっているジョブ型への移行に関する議論では、ジョブディスクリプションを明確にするために決められた以外の仕事をしなくなる、未経験の新卒採用をしないため若年失業率が上がるなど、批判や懸念が多いのは事実である。しかし、「ジョブ型の本来の姿に照らすと、さまざまな誤解もある」と、マーサー ジャパンの取締役執行役員の白井正人氏は話す。

リクルートワークス研究所『Works』

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 『Works』は「人事が変われば、社会が変わる」を提唱する人事プロフェッショナルのための研究雑誌です。

               

 本記事は『Works』164号(2021年2月発行)「欧米のジョブ型の本質とは。大学との関係を探る」より「雇用管理:ジョブ型とはジョブを定義することではない “人の出入り”前提の競争原理の働くエコシステムだ」を一部編集の上、転載したものです。


市場でジョブを介して個人と会社が取引する

 まず、ジョブ型について、「日本企業のなかには、ジョブディスクリプションを定義することだと思っている人が少なくありません。ジョブディスクリプションを採用時に決めても、入社後の現場のマネジメントや評価において厳密に運用している企業は多くありません。ジョブ型の本質はジョブやそれに伴うグレードではなく、その“エコシステム”のありようにあると理解してほしいのです」と、白井氏は説明する。「ジョブ型のエコシステムでは、“人の出入り”が前提となっています。転職も多く、法律への配慮はいるものの雇用調整を行い、人材の流動性も高い。ジョブというものを個人と会社が取引する市場ができ上がっています」(白井氏)

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 市場では、個人はよりよいジョブを取り合い、企業はよりよい人材を取り合う。競争原理が働くため、個人はよりよい報酬のジョブを獲得するためにより高度な知識や技術、スキルを獲得しようとし、入社後は自らの市場価値を高めるためにより高いパフォーマンスを上げようとする。会社は優秀な個人を引きつけ、引き留めようと、よりよい会社であろうと努めるのだ。

 メンバーシップ型のエコシステムは、これと対極にある。人の出入りを前提としない、流動性の低い個社に閉じたものだ。「新卒入社の競争は厳しいですが、メンバーシップを大事にするため、入社後は競争というものを前面に出しません。雇用調整も原則行いません。これが、意欲もパフォーマンスも低い人材が滞留することにもつながってしまっています」(白井氏)

ゲームチェンジが本格的なジョブ型への移行を促す

 白井氏によれば、今、日本で起きているジョブ型への移行の動きは3度目にあたるという。「2度目までと異なり、今回は本格的にエコシステムを転換し、競争原理にのっとった雇用管理を志向する企業が一部出てきています」(白井氏)

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 上の図が、日本における雇用管理のこれまでの流れである。日本企業がバブル期まで普通に行ってきた職能主義(図中0)は、高度成長期において機能した仕組みだ。「1980年代後半から1990年代はじめまで、日本企業の給与水準は世界一高かった。バブル崩壊後から2000年代前半にかけて、人件費の抑制のために役割や職務による成果主義を導入していきました。これが1回目の、ジョブというものへの意識の高まりでした(図中1)」(白井氏)。2回目は、2000年代の後半に訪れる。「このきっかけはグローバル化でした。いよいよ日本で人口減少が始まり、海外に出て行かざるを得なくなりました。すると、海外とジョブグレードや評価制度をそろえる必要性が出てきたのです(図中2)」(白井氏)

 これらは、人件費の抑制やグローバル展開という意味で、「一定の効果があったものの、ジョブ型のエコシステムには程遠いものだった」(白井氏)という。3度目の今回は、何が異なるのか。「今回のきっかけが、大きなゲームチェンジであることです。ビジネスモデルを大きく変える。先端テクノロジーを使って新しいものを生み出す。

 閉じたコミュニティーではこうした変革を起こせる人が出てきません。外からできる人を採用する、つまり、戦略に合わせて人の入れ替えを本格的に始める重要性が高まってきたのです(図中3)」(白井氏)

 既に変化は起こっている。デジタル人材の採用の世界だ。「従来の報酬水準では、欧米企業にどうしても獲得競争で負けてしまう。そこで、市場原理に基づいて新卒の初任給を大きく上げる企業が出てきました。このようなことが、徐々に全体に広がっていくと考えられます」(白井氏)

 企業が注視すべきは、若い人材の視線だ。「企業の雇用システムは日本の年金システムと同じような構造だと思っています。もし、若者に選択権があるのならば、今の中高年に比べて圧倒的に損をするから年金に加入しないという人が多く出るでしょう。メンバーシップ型にも同じような感覚を持っています。どこで働くかという選択権は、年金と異なり個人が持っています。優秀な人材ほど、メンバーシップ型の企業を選択しなくなっていきます」(白井氏)

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