#SHIFT

21卒が定年退職するころ、労働市場はどうなる? データから考える、「定年」の在り方「仕事卒業日」からキャリアを逆算する(4/5 ページ)

» 2021年03月30日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

定年制は、企業への救済措置という面も

 定年制度は、日本特有の制度だといわれます。欧州では年金支給開始年齢との間を開けずに済む場合などに定年制を認めるケースもあるようですが、基本的に欧米では一定の年齢に達したことを理由に職を失うことは、年齢差別と見なされかねません。

 それに対し、日本の場合は年功賃金の考え方が今も根強く残っています。長く在籍するだけで賃金が上昇し続ける仕組みだと、いずれ社員の能力向上と賃金上昇が比例しなくなります。結果、企業は在籍年数だけ長くて能力が伴わない高給取り社員を多数抱えることになりかねません。日本で定年制度が認められている背景には、年功賃金を導入する一方で、一定の年齢に達すれば合法的に雇用契約を解除できるという、企業への救済措置という面があるといえます。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

 43年後の未来においても、年功賃金を導入している企業は存在するかもしれません。しかし、既にさまざまな矛盾が露呈している仕組みだけに、恐らく主流にはなっていないように思います。年功賃金の考え方を採用しない企業が増えるほど、定年制度の必要性も薄れていくはずです。

 また、他の理由からも、43年後の未来では定年制度がかなり形骸化している可能性があるように思います。

 先ほど表で示したように、単純予測によると43年後の未来は今以上に慢性的な売り手市場になっています。少しでも労働力を確保したいと考えたとき、主婦層や外国人などとともに、企業としては労働意欲を持つシニア層もできる限り戦力化したいはずです。その傾向は今も既にありますが、43年後はさらに強くなっていると考えられます。定年など設けず、実力ある人ならいくつになっても雇用していたいと考える企業が、今以上に増えていてもおかしくありません。

 また、将来推計人口を発表している国立社会保障・人口問題研究所は、人口に占める年代ごとの比率についても未来予測を公表しています。そのデータによると、総人口に占める65歳以上の比率は、2021年が29.1%であるのに対し、2064年は38.3%と10ポイント近くも上昇し、およそ4割に達します。逆に、現役世代と呼ばれる15〜64歳の生産年齢人口の比率は58.9%から51.5%へと7ポイント以上減少します。

 よく、〇〇年には現役世代2人で65歳以上の世代1人を支えなければならない、といった数値を目にします。高齢化が進む一方で、現役世代を15〜64歳とする定義が同じままであれば、社会のバランスはどんどん歪になっていきます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.