2021年3月25日、奈良県、奈良市、近鉄の3者は「平城宮遺跡内を通過する近鉄奈良線の移設」に合意した。国が1978年(昭和53年)に「特別史跡平城宮跡保存整備基本構想」で近鉄の軌道移設を示して以来、43年目の合意だ。報道によると、奈良県は用地買収や工事にかかる期間として40年を想定しているという。その通りなら完成は61年。基本構想から83年の悲願達成だ。
ところ変わって、東京都目黒区自由が丘地区の都市再生計画が動き出した。目黒区は21年2月3日、令和3年度予算において「自由が丘の鉄道立体交差化」の調査・検討費用を計上した。自由が丘駅は東急電鉄東横線と大井町線が交差する駅だ。立体交差化にあたり地上駅の大井町線は地下化され、地平は広大な空間ができると思われる。
遺跡を整えたい。まちづくりを進めたい。しかし、どちらも「気持ち」だけでは進まない。利益を得る人は多いけれども、不利益となる立場もあるからだ。その中で、平城京と自由が丘の計画が動き出す背景にはきっかけがある。「踏切道改良促進法」だ。16年(平成28年)の改正で、国土交通大臣が改良すべき踏切を指定し、期限付きで改良計画の提出を求めた。
踏切改良計画を提出すると、自治体負担分の費用の半分は国が支援する。道路特定財源(ガソリン税・自動車重量税等)を活用した国庫補助だ。改良計画が決まらなかった場合は計画を策定できなかった理由を付して新たな改良計画を提出する必要がある。
罰則は見当たらないけれども、当該踏切で大事故が起きた場合「国が危険だ改良しろと指定した踏切を放置した自治体と鉄道側の責任」を問われるだろう。事故そのものが踏切横断者にあるとしても、改良を放置した踏切の関係者に損害賠償や慰謝料を請求される恐れはある。だから国土交通大臣による「改良の指定」は重く受け止められる。
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