砂漠、北極でも生産可能! 空気と電気でつくる食用タンパク質の可能性少量の“うまみ”を含む(4/5 ページ)

» 2021年04月05日 13時30分 公開
[小林香織ITmedia]

国内外の食品メーカーとの共創が狙い

 ソレインを使った食品の研究を進めている同社だが、自社で食品の製造販売をする予定はなく、B2Bビジネスにより最短で利益を出すのが狙いだ。

 同社が開発したソレインは、これまで世の中に出回っていない新規の食品であり、販売には各国の専門機関から承認を得る必要がある。そういったプロセスの進行や量産設備の構築、グローバルなPRなどに時間や資金を割く必要があるため、自社で製造販売まで請け負うのは時間がかかりすぎるうえに、リスキーだと判断したそうだ。

 バイオテック企業は同様のビジネスモデルが一般的で、特に資金力のないスタートアップはその傾向が強い。同社の戦略は賢明な判断といえる。

フィンランドのVTT技術研究センターで、長年エネルギー分野の研究に取り組んできた経歴を持つヴァイニクック氏

 現状、日本企業との提携実績はなく、日本に特化したプロモーションを行っているわけではないが、「日本市場のパートナーを強く求めている」とヴァイニクック氏は言う。

 「私たちは最先端の技術により、世界的にもレアな次世代タンパク質素材を開発しました。しかし、量産化には利益を得るための事業が必要です。できるだけ早く日本の食品メーカーとの対話を始め、日本への投資を一緒に計画したいと思っています。食品の共同研究のみならず、ライセンスを販売する、合弁会社を設立するなど、柔軟なビジネスモデルが考えられます」

 同様の技術を持つ企業はいくつかあり、英国の「Deep Branch(ディープ・ブランチ)」、デンマークの「Unibio(ユニバイオ)」、カリフォルニアの「AIR PROTEIN(エアー・プロテイン)」などが挙げられる。ディープ・ブランチとユニバイオは、すでに他社と提携して利益をあげているが、現状は動物の飼料用途のみにとどまる。エアー・プロテインは、19年に食肉代替品を開発したと発表しているが、公式情報を見る限り、まだ市場には出回っていないようだ。

 となると、ソーラー・フーズが次世代食用タンパク質を使った食品を世界で初めて発売することになるかもしれない。

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