忘れたころに「バカッター事件」が繰り返される理由 企業の対策は?年次進行という視点(1/3 ページ)

» 2021年04月19日 13時33分 公開
[増沢隆太INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた):

株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役。キャリアとコミュニケーションの専門家として、芸能人や政治家の謝罪会見などをコミュニケーションや危機管理の視点で、テレビ、ラジオ、新聞等において解説している。大学や企業でのキャリア開発やコミュニケーション講座を全国で展開中。著書「謝罪の作法」他多数。


 ニュースによれば、焼肉店のアルバイトが店のアイスクリームを什器から直飲みしたり、商品を不衛生にもてあそぶ動画が拡散しました。30代以上で、日常的にネットニュースを見ている人であれば「また?」と思ったことでしょう。

 ネット上にバイトテロなどの不適切行為をさらす行為は「バカッター」と呼ばれるのが固有名詞化するほど定着しました。それくらい繰り返され、その都度「犯人」の自宅住所や家族のプライバシーまでさらされ、就職や日常生活にも支障の出るネットリンチを受けます。今回の事件もアルバイト先は懲戒解雇処分を下したと報道されています。

 この世から犯罪がなくならないように、人間の愚かさは消えません。不適切行為は、どれだけ注意喚起しても恐らく永遠に起こるのだと思います。一方、バカッターは単にばかげた行為をするだけでなく、その結果をネットに上げることで、世界中にその存在を知らしめるという大きな影響力があります。今回もその行為がTikTokに動画投稿され、一気に拡散しました。典型的炎上状態になり、動画も転載を繰り返し、すでに犯人と思われる個人名までさらされています。

バカッター史前期

 思い起こせば2000年代後半、牛丼店でアルバイトが商材の牛丼で超大盛りを作って遊ぶ動画がネット上で注目された頃がはじまりだったと思います。インターネットがない時代でも、アルバイトの悪ふざけは恐らくあったことでしょう。しかしネットの力で、一度その存在が世に広まれば、世界中に拡散します。そして次は犯人あばきが始まります。

 その後再び不適切行為が盛り上がったのが2013年といわれる、バカッター元年です。このときはコンビニのアイスケースに入ってふざける写真や、食器洗浄機に体を入れている写真が続々とツイッターを介して出回り、被害者であるそのコンビニ店は後に閉店、食洗機の蕎麦店は破産と悲惨な末路を迎えました。

 続々と発生する不適切行為はツイッターが主たるメディアだったことからバカッター行為とか、バイトテロと呼ばれるようになりました。その後も来店客の個人情報やプライバシーを勝手に公開したり、次から次へと不適切自慢が世間に晒され、その犯人個人が特定されていきました

 店舗の危機管理、接客業やアルバイト従業員管理の重大性やリスクに注目が集まり、おりからの悪質クレーマー対策と合わせて「ストアディフェンス」という視点で、私も店舗の危機管理専門家としてあちこちでセミナーや講演に呼ばれました。(プロに聞け(インテリジェンス an report) 第25回 バイトテロ、ネット炎上を未然に防ぐ―― 今、求められるネットリテラシー教育とは)

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