話はちょっと変わるが、手で紙を切るとき、そのままビリビリとやっても、真っすぐ切ることは難しい。というわけで、折り目を入れる人が多いはずである。それでもうまく切れないことがあるが、なにもしないよりはマシである。
開発チームは気泡シートに折り目を入れれば、うまくいくのではないかと考えた。しかし、問題は素材である。紙は簡単に切れるが、相手は樹脂だ。加熱してもダメ、各列にミシン目を入れようとしてもダメ。テストを50回ほど繰り返したものの、理想の「ミゾ」を手にすることはできなかった。
ポッチとポッチの間に、碁盤の目のようなミゾをつくりたい。そのためには、樹脂を薄くしなければいけない、と考えていたが、それは固定概念=悪だったようだ。結論を先に言うと、薄くしなくても理想のミゾをつくることに成功したのだ。
では、どうやってそのミゾをつくることができたのか。ヒントは「ゴミ箱」の中にあった。「ゴミ箱の中に不良品のプチプチが捨ててあって、それは樹脂がペロッとはがれていたんですよね。その構造をヒントに、開発を進めていきました」(佐藤さん)
ここから先は「企業秘密」ということなので、残念ながら詳細を伝えることができないが、素材に特殊な加工を施すことで、手で真っすぐ切ることができる「ミゾ」が完成したのだ。
これまでの工程を振り返ると、スパスパ誕生の背景には3つのポイントがある。それは「形」「素材」「構造」。1つめの「形」について、プチプチに慣れた人からすれば「丸でいいでしょ、なぜ四角にしたの?」と思われたかもしれないが、丸ポッチを碁盤の目のように並べるとどうなるのか。丸と丸の間に、無駄な空間ができる。一方、四角であれば、効率よく並べることができるので、なにもない部分をできるだけ少なくすることができるのだ。
2つめの「素材」は、ポリエチレンに「ピー(企業秘密)」を加えた。配合をちょっと変えるだけで、うまく切れなくなるそうなので、この世界は奥が深い。そして、3つめの「構造」はミゾである。ミゾについては先ほど紹介したので、割愛する。
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