今回の決算発表で注目のポイントは大きく2点ある。
1点目は国内でもワクチンの接種が進み、“コロナ後"が見え始めた売上成長率の見通しだ。Sansanは22年5月期の連結売上高成長率の見通しを、レンジ予想で+25%〜+28%と示した(今回の本決算の実績は+21.1%)。
依然として新型コロナウイルスの影響を受けるも、成長率の再加速を掲げ、高成長SaaS企業への回帰の姿勢が伺えた。
2点目は、その成長加速の柱として期待されるクラウド請求書受領サービス「Bill One」事業の立ち上がり状況だ。
Bill Oneは名刺管理サービスSansan、Eightに次ぐ第3の柱として、Sansanが注力しているプロダクトだ。20年5月にサービスをローンチし、Sansanが得意とするテレビCMでの露出なども増やしながら、契約件数は前四半期比73.2%増の239件に達し、急速にユーザーを獲得している。
名刺交換を主軸としていたSansanにとって、請求書領域のサービスは一見「飛地ビジネス」とみる向きもある。一方で取材を進めるとBill OneはSansanの強みを生かしたビジネスであることが分かってきた。
名刺管理サービスSansanの独自性は、アナログな“紙"の情報をデータ化し、共有・活用できる点にある。このデータ化にあたってはOCRでの読み取り精度の高さはもちろん、最終的な正確性を期すため、人的な確認やデータ処理が必要となる。
Sansanは通常のSaaS企業であれば避けたい人的なオペレーション体制を構築し、名刺情報を「使えるデータ」にしてきた。この独自のノウハウこそが強みであり、それを再び生かしたサービスがBill Oneだと言える。
Bill Oneは請求書の“受け取り"を一元的にデジタル化するサービスだ。
請求書領域のSaaSでは、請求書の“発行・発送“をデジタル化するサービスが先行し、効率化が進んでいる。一方で、複数に渡る取引先から郵送やメール添付など異なるフォーマットで請求書を受領し、最終的に経理に反映させる作業には課題が残る。
この課題に対し、Bill Oneというツールに請求書の受領を集約し、Sansan側のセンターで情報をデジタル化することで、企業がクラウド上で一元管理することが可能となった。
資料では99.9%の精度でデータ化することが示されているが、この正確性の裏にはSansanが培ってきた名刺読み取りのノウハウが詰まっている。現時点においてはARR数億円に満たないサービスと見られるが、今後Sansanの強みが如何なく発揮され、成長をけん引できるかに注目が集まる。
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