映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 「第3村ミニチュアセット」展示の舞台裏を聞く興行収入は100億円を突破(2/2 ページ)

» 2021年07月17日 13時04分 公開
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展示を想定していたものではなかった

 ミニチュアセットはパーツごとに分割、分類して大量の箱に保管されていた。映画が完成するまでは、庵野総監督が「もっと良いアングルが無いか?」とミニチュアを使って再撮影する事態も想定され、すぐに元の状態にセッティングできるように保管する必要があったという。幸い、再撮影という事態は避けられたものの、SMALL WORLDSでの保管は映画制作スタッフにとって心強かったそうだ。

 第3村ミニチュアセットは当初から展示を想定していたものではなかったが、映画公開が近づいてくると、ミニチュア展示の話も浮上した。三好さんも「どちらからというわけでもなく、映画が公開されたら第3村ミニチュアセットも見せられますね、と自然と話をしていました」と振り返る。

 アニメの制作過程でミニチュアを制作したのも異例だが、こうした形で結果的に映画のプロモーションの役割も果たしている。今後の展望を近藤CEOは冷静に見据えている。

 「当館は20年6月にオープンしたのですが、コロナ禍の影響を当初から受け続けていました。厳しい状況の中で、『シン・エヴァ』とのコラボは大変ありがたい話です。9月20日まで展示予定ですので、コロナ禍が落ち着いたら、全国にいる『エヴァンゲリオン』シリーズのファンの方にも見に来ていただきたいと思います」

 『エヴァンゲリオン』シリーズの版権を管理するグラウンドワークス(東京都杉並区)の神村靖宏社長はこう期待する。

 「ファンの方に映画をより楽しんでもらうために第3村ミニチュアセットを展示しました。『シン・エヴァ』は本当に切り口の多い映画ですから、いろいろな鑑賞の仕方があります。アニメ映画のために、ミニチュアセットまで作ったなんて例がないことです。こうした作り手側のストーリーもミニチュアから感じ取り、あらためて映画を観ていただいて新しい発見をしていただきたいと思いました」

 第3村ミニチュアセットの展示では、スマートフォンなどで写真撮影することができる。映画を観た人にはもちろん、まだ観ていない人にも楽しめるように設計されていた。むしろ、「もっとこの世界を知りたい」と映画を観に行くきっかけを作っていると感じた。

 『シン・エヴァ』は、一部の劇場を除いて7月21日に終映することが発表された。映画をこれから観る人も、もう一度観る人も、この第3村ミニチュアセットによって自分だけのベストアングルを探せるのが大きな魅力だろう。

グラウンドワークスの神村靖宏社長(左)と、カラーの学芸員・三好寛さん
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