それが、Fun(楽しさ)とラーニングカルチャーだ。
まずFun(楽しさ)とは何か。日本マイクロソフトでは、複数人でZoomやTeamsを起動しMSラーンで勉強するという習慣がある。「エンジニアの方がよくやる“もくもく会”ってあるじゃないですか。それと同じです。ずーっと黙って勉強するだけなんですけど、途中でちょっとおしゃべりしたり、チャットしたり。そういった楽しみの部分が、勉強を継続する上で重要だと気付きました」(伊藤氏)
その気付きを基に、今回の協業プロジェクトで採用されたのが「クラウドスキルチャレンジ」だ。これは、もともと日本マイクロソフトが提供している、複数人でMSラーンを使いながら一緒に学べるゲーミフィケーション形式プログラム。協業プロジェクトでは、クラウドスキルチャレンジを利用して、ラーニングコミュニティを活性化する狙いがある。
「同じ目的を持つコミュニティの中で交流したり、競い合ったりすることは、単純に楽しいですし、学習の停滞感を乗り越える力になります。ラーニングコミュニティがあるのとないのとでは、実際に合格率が2〜3割→7割まで変化した企業さまもあるくらいで、その効果には大きく期待ができます」(柿内氏)
ラーニングカルチャーは、その名のとおり学ぶ文化。これを社内に根付かせることが重要だという。ここに関して、日本マイクロソフトは「相当、真剣に取り組んでいます」(伊藤氏)と語尾を強める。
同社がWindows、Officeの会社からAzureをはじめとするクラウド&AIの会社へと大きく舵を切って数年。当然ビジネスモデルも変わり、カルチャー改革の必要に迫られた。その中で核となっているのが、ラーニングカルチャー作りだという。
以前まで、日本マイクロソフトでは「誰が一番、モノを知っているか競い合うような――正直、そういった空気はありましたね」。伊藤氏は笑って話しつつ、こう続ける。
「だけど発展目覚ましいクラウド&AIを扱う上で、必要になるのは、ノウ・イット・オール(知ったかぶり)ではなく、ラーン・イット・オール(全てを学ぶ)。職位、部門にかかわらず、リスキリングで学んでいける人が会社にとって重要です」
日本マイクロソフトでは、月日をかけてラーニングカルチャーを根付かせることに成功した。2年ほど前には、社長も営業のトップも、立場に関係なく全社員で初級レベルのAzure基礎資格を取得。そこから徐々に発展させ、毎年ロールごとに「いつまでに、どこまでの試験をこなし、認定資格を取得するべきか」といった細かな指導を続けている。当初は不満の声もあったというが、全社員でカルチャーを根付かせたことで、「年間100時間、多い人だと160時間勉強することは普通」だという。
「誰がどこまで進んでいるのか、社内のラーニング状況を全て可視化することで、お互いのリスペクトにもつながっています。私は、リスキリングはリーダーこそがまずやるべきだと思いますね。自分ができもしないことを、部下にやらせるのでは、根付くべきカルチャーも根付きませんから」(伊藤氏)
日本マイクロソフトのクラウド&AI、そしてリスキリングにおける知見、パーソルイノベーションのコーチング。両社が手を組むことで、社員が自己開発のオーナーシップを持ち、楽しみながら学びデジタル人材を目指せる仕組みを作る。今回の協業の目的は、そんなところにある。
しかしそもそも、デジタル人材とは何なのか。ふとそんな疑問もわいてくる。話を聞いてみると、両社におけるデジタル人材は「エンジニア」だけを指すものではないという。伊藤氏はこのように回答する。
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