クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新型アクア ヤリスじゃダメなのか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2021年08月23日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

初代アクアの役割と評価

 ハイブリッドだけを抜き出して見た時、どうだったのかも押さえておきたい。まずは軽自動車からだ。軽の価格帯では、プリウスのような「モーター出力が大きくEV走行が可能」なストロングタイプのハイブリッドはコストが高すぎ、「モーター出力が小さく、EV走行ができない」マイルドハイブリッドが投入された。

 つまり、軽自動車にはストロングハイブリッドが入り込めなかったため、ストロングハイブリッドの最下限はBセグメントになった。それは取りも直さず、このクラスが国内マーケットにおける最廉価ハイブリッドということになる。つまりアクアは、フィット・ハイブリッド、ノート e-POWERと並んで、ハイブリッドの普及を担う先兵グループを形成した。

 さらに見方を変えてトヨタにとってどうだったかと考えると、ハイブリッド最廉価、つまり最量販クラスを担った先代アクアは、トヨタハイブリッド帝国の覇権拡大に大きく貢献した大功労者という位置づけになっていくわけだ。

 で、その大功労者の初代アクアがクルマとしてどうだったかといえば、これはなかなかに酷(ひど)いものだった。褒めてあげられるのは燃費と下取り価格くらいで、シートがダメ、ドライビングポジションがダメ、ブレーキがダメ、ハンドリングも及第点に届かない、パワートレインは全く言うことを聞かないから思ったように加減速ができない。という具合で、本当のこととはいえ、書いている側もまるで悪口のようで嫌になるくらいのクルマだった。年次改良で少しずつ改善されていった部分もあるが、ついぞ総合評価を変えるまでにはいたっていない。

 なので、特に、トヨタのBセグメントに劇的に生まれ変わったヤリスがデビューして以降は、トヨタの人達に「アクアを早くモデルチェンジしてくれ」と言い続けてきた。なまじブランド化して売れるので、よく分からず買ってしまう人がいるのが残念でならなかった。他人事ながら、お節介にも「ヤリス・ハイブリッドにすれば良いのに」と常に思っていた。そのアクアがモデルチェンジ、ようやくその時が来たのである。

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