クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新型アクア ヤリスじゃダメなのか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)

» 2021年08月23日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

バイポーラバッテリー

 今回のアクアにはもうひとつ大きなトピックがある。それがバイポーラ型バッテリーの採用だ。第3世代のプリウスに、12年に初めてPHVモデルが追加され、その時初採用されたのがリチウムイオン電池だった。当時のプリウスにはニッケル水素電池が採用されており、PHVにだけより高級高性能なリチウムイオン電池が採用されているという構図だった。

 ところが、今回のアクアでは最廉価モデルがリチウムイオン電池で、上級モデルはニッケル水素電池と、立場が逆転している。逆転の理由を説明するまえに構造の違いを説明しなくてはならない。

 電池の構造は、2つの電極(集電体)にそれぞれ正極剤と負極剤を塗布し、その間を電解液で満たす。両極の間の電解液中を電子が移動して、電流が発生する。中心電極と外周電極を多層化したなら乾電池のような円筒型電池になるし、ミルフィーユのように多層にすれば角形電池になる。

アクアに搭載されたニッケル水素バイポーラ型バッテリー

 スペース効率を重視する角形の場合、多層にする都合上、この積層構造をいかに薄くするかがバッテリーのコンパクト化を左右する。つまりアルミ箔(はく)のような薄い金属箔に、塗膜のように薄く極剤を塗って、それを多層に重ねてからプレス機でギチギチに加圧して全体の厚みを極限まで減らす。そうやって圧縮した極の間に電解液を時間をかけて染みこませる。これには1カ月くらい掛かる。バッテリーの生産は大変なのだ。

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