イオンとヤオコー、スーパー業界の優等生がそれぞれ仕掛ける新業態の明暗小売・流通アナリストの視点(2/5 ページ)

» 2021年08月26日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 この店、行ってみても青い看板に「Palette!」と表示があるだけで、見た目からはイオングループの雰囲気は全くないし、中に入っても、イオンのプライベートブランドである「トップバリュ」は置いておらず、来店客はここがイオングループだと意識しないだろう。

 品ぞろえは絞り込まれている印象を受ける。加工食品は、一つのジャンルに対してわずか数種類しか置いていない。また、生鮮食品は必要最低限のものがあるだけで、魚などは冷凍品や塩干ものがほとんど。生ものは廃棄ロスが出るため、コストカットの観点からほとんど置いていないようだ。

 こうした品ぞろえを見ていると、パレッテは、欧米において破竹の勢いで伸びているハードディスカウンター(従来のDSをしのぐ、「超格安小売」くらいの意味合い)の主力業態である「ボックスストア」の日本版アレンジ業態なのだと見て取れる。ボックスストアとは、商品を段ボールのままで置くことからついた呼び名とされ、陳列の手間を低減してコストカットを実現しているのだ。

 商品数を絞り込んでいるのは、1品当たりの売り上げを高め、さらに多店舗販売することで、メーカーから安く調達できる関係を構築するために有効な手段だ。つまり、パレッテは徹底してコストカットを意識した店舗づくりをしているといえる。

 こうした仕組みだけでなく、スマホ決済システム「Scan&Go」も導入しており、レジに配置する人数は極めて少人数に抑えられている。アプリを使って推奨商品を買うと値引きするというキャンペーンを実施し、アプリ利用の促進も図っているようだ。かつてダイエーがハードディスカウンターの模倣業態として生み出したのがビッグ・エーだったが、パレッテはこの流れを今風にデジタルと絡めたアレンジを行い、再構築することを目指した店だと感じられる。

公式Webサイトでもアプリを推すパレッテ(出所:同社公式Webサイト)

 確かに、他チェーンと比較するとかなり安く、特に加工食品ともなれば明確に差が出る。ただ、現時点で日本の消費者に歓迎されるかといえば、必ずしもそうでもないように筆者は感じた。実際、パレッテを視察した後に他チェーンの店舗へ行くと、競合店の方が客数も、買い上げ点数も多いように見受けられたのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.