イオンとヤオコー、スーパー業界の優等生がそれぞれ仕掛ける新業態の明暗小売・流通アナリストの視点(3/5 ページ)

» 2021年08月26日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 なぜかといえば、パレッテではアイテム数の絞り込みが徹底しているため、選択肢が少なすぎる。消費者それぞれが持つ、「自分の定番品」がそろわないため、買い物で感じるストレスが高くなるのだ。

 食品DSの雄、オーケーであれば、かなり幅広い品ぞろえの中から選べる上に、ナショナルブランド商品もパレッテと大差ない安さを体感できる。特に中高年の消費者は、「たくさんある中から選びたい」という感覚の人が多いため、パレッテがマーケットの主役になることはないだろう、というわけだ。

ヤオコーが仕掛けるDSは好調スタート

 こうした感覚を裏付ける出来事があった。8月上旬に埼玉県飯能市にオープンしたヤオコーのDS新業態「フーコット」の出現だ。

 ヤオコーは、いわずとしれた高品質食品スーパーの最有力企業で、32期増収増益という成長企業でもある。そのヤオコーがM&Aしたグループ内のDSである「エイヴイ」の遺伝子を導入して、ディスカウント業態に参入したのである。

 これは、既存の首都圏郊外において、ざっくりいえばアッパーミドル以上の顧客層に強みを持っているヤオコーが、これまで来てもらえなかった価格重視の顧客層まで取り込もうというチャレンジである。フーコットは、生鮮から加工食品、酒類に至るまで幅広い品ぞろえである上、明らかに安さを実感できる価格設定が人気を集めている。その集客力はすさまじく、平日にもかかわらず周辺道路は駐車場待ちの車列で大渋滞、オープン直後だからということはあろうが、パレッテと比較して、かなり好調なスタートを切っていることは間違いなさそうだ。

ヤオコーが新たに仕掛ける「フーコット」(筆者撮影)

 ヤオコーは埼玉県小川町という郊外部から発祥して、同県を中心に首都圏郊外部のクルマ生活圏に、売場面積600〜700坪くらいと、食品スーパーとしては大型の店(ショッピングモール形式の複合施設も多い)を展開して成長。今ではイオン系、セブンアンドアイ系、商社系ではない独立系スーパーでは最大手クラスの企業となった。

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