「3週間でピーク、1カ月でゼロ」中国の“社会実験”から見えるデルタ株の動き浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(5/5 ページ)

» 2021年08月26日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]
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とことん我慢すれば2週間で収束

 強硬策の結果、全国の新規感染者は8月9日の108人をピークに減少に転じ、8月16日以降は一桁まで下がり、8月22日、約1カ月ぶりにゼロになった。

 7月20日に9人の陽性が判明した南京市は、48人の感染が判明した27日がピークで、8月5日以降は1日の新規感染者が0〜2人で推移し、13日以降は感染者が確認されていない。8月19日に市内の警戒レベルを下げ、22日には南京市外への移動を大幅に緩和した。

 張家界市は7月29日に最初の感染者が確認され、8月8日の10人をピークに減少。8月15日を最後に感染者は確認されていない。

 そして、全国で感染者が最も多く、高齢者の比率も高かった揚州市は、58人の感染が確認された8月5日をピークに、15日以降は一けたで推移、22日にゼロとなった。

 多くの国が導入しているロックダウンすら難しい日本と、当局の指示に従わず市外に移動した市民を逮捕したり、交通を即日封鎖することが可能な中国は、制度や前提条件が大きく違うため、対策そのものは参考にはならないだろう。

 だが、高頻度、広範囲でPCR検査を実施し、感染者のあぶりだしと行動追跡がしやすい中国の動きから、デルタ株がわずかな隙をついて流入し容易に拡大することや、地域の特性がが広がり方に反映されること、そしてとことん我慢すれば、約2週間で収束が見えることが分かる。

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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