厚生労働省は事務通知で、実費支給の移動費用を社会保険料・労働保険料などの算定基礎となる賃金・報酬などに入れるかどうかは、労働日の労働契約上の労務提供地によって判断すると説明しています。
テレワーク対象者が一時的に出社する際に要する交通費(実費)については、当該労働日の労働契約上の労務の提供地が自宅の場合は、一時的な出社は費用弁償と見なされ社会保険料・労働保険料などの算定基礎となる賃金・報酬などには含まれません。
当該労働日の労働契約上の労務の提供地が企業とされている場合は、当該費用は通勤手当として、社会保険料・労働保険料などの算定基礎となる賃金・報酬などに含まれます。
遠隔地の交通費は高額になるので、社会保険料・労働保険料などの算定基礎となる賃金・報酬などに含むと社会保険料は増額となります。その分社員の将来の年金額は増加します。しかし、企業にとっては通勤手当と社会保険料の二重の増額となり負担が大きくなります。これらのことから労働契約上の勤務場所の定義は慎重にした方がよいでしょう。
広域な地域で事業展開をしている企業の場合、人事異動に伴い転居が必要になることがあります。各企業では、転居の諸費用について補助制度を用意して円滑に人事異動を進められるように準備しています。具体的には引越費用の負担、本人・家族の交通費負担、新居の家具などの購入を支援する赴任手当、借り上げ社宅、家賃補助制度、単身赴任手当などがあげられます。制度の適用には「異動前と後の職場間の距離が一定以上」などの要件が定められていることが多いです。
さて、自己都合で遠隔地に居住する社員に対してもこの制度は適用されるのでしょうか。例えば、今回の育児休業から新宿の本社に復職した社員が、渋谷の店舗に人事異動したケースを考えてみます。渋谷の店舗は出勤業務が主なので職場の近くに転居しました。異動前と後の職場間の距離は約5km、交通機関も3駅。しかし、異動前と後の住居の距離は約250kmとなります。
異動前と後の職場間の距離が条件という制度の適用要件を当てはめると、5kmは制度の適用要件を満たさずこの転居では転勤に関する諸制度は認められないこととなります。その場合は、相当な金額が自己負担となります。社員もそのことが事前に分かっていれば遠隔地の居住を選択しなかったと後悔することも考えられます。このようなことのないように事前に制度の適用範囲を明確にして社員に説明しておくことが重要です。
また、遠隔地に居住する社員に対して優遇すると、職場の近隣に居住する社員との公平性が保たれなくなります。そのため制度の適用については、一括で適用の有無を判断するのではなく、制度毎にその目的にそって「自己都合による遠隔地居住者に対する適用の可否」を判断したほうがよいと考えられます。
自己都合による遠隔地に居住する社員からテレワークの申出があった場合には、以下のような将来発生する可能性のある費用ついてあらかじめ決めておき、社員に説明をし、納得のうえで判断してもらいましょう。
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