少し歴史を振り返ると、三元系で安定化が図られる以前、つまりリチウムを単独で使っていた頃は、リチウムイオン電池は永遠に夢の技術といわれており、まさか今、われわれが知るように、時代を席巻するものになるとは誰も予想していなかった。それを実用化に持ち込んだことでノーベル賞を受賞したのが吉野彰氏らである。
さて、話は元に戻る。現在のところ、三元系が最もトータルバランスが良いとされているのだが、いくら優れていても供給に難のある元素が欠かせないのではどうにもならない。
というところで、再び少し脱線する。というか脱線しないと話が追えなくなる恐れがある。大事な話だが、今世の中の多くのメディアではこの三元系だけがリチウムイオン電池であるかのようにいわれているが、冒頭で述べた通り、電子のやり取りにリチウムイオンを用いるものは全部リチウムイオン電池とするのが正しい。つまり今注目されているリン酸鉄電池もまたリチウムイオン電池の一種である。
ちなみに三元系リチウムイオンバッテリーの配合については、前編のコメント欄に、ジャーナリストの牧野茂雄さんが書き込んでくださった通り、この組み合わせはニッケル、コバルト、マンガン(NCM)5:3:2から6:2:2へと変わり、現在これを8:1:1にする研究が進められているが、まだ時間がかかる模様だ。これらの金属はいわばリチウム電池の安全装置の役割を果たしているので、減らせば出火リスクが増えるのである。
ちなみにこの配合の正確な比率はバッテリーメーカー各社の極秘レシピであり、数値はあくまでも目安だと思ってもらいたい。厳密にいえば各社ごとに、あるいは製品毎に違う。採用する自動車メーカーが求める性能によって配合を変えているわけだ。
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