「働き続ける」か「療養に専念」か 病のある社員を“両輪”で支援する、日本オラクルの人事制度社員の病と人事(2/3 ページ)

» 2021年09月16日 07時00分 公開
[リクルートワークス研究所]

シックリーブや柔軟な働き方で“働き続ける”を支援

 安心して働き続けるための選択を支える制度はまず、有休とは別途毎年付与される5日間の有給の傷病休暇がある。「これは1時間単位で取得でき、働きながら治療のために適宜休みを取ることが可能です」(二見氏)

 また、同社の場合、コロナ禍以前から柔軟な働き方を導入しており、これも病がある社員が働き続けることの後押しになっている。「場所や時間に依存せず、より高い成果を出してもらうことを目的に、上司の承認で適用可能な在宅勤務、あるいは裁量労働など、フレキシブルな働き方が可能になっています」(二見氏)

 社員が病にかかったとき、本人、あるいは上司がすぐ相談できるように、産業医、保健師といった産業保健スタッフや部門人事などいくつかのチャネルを用意している。「在宅勤務をしている社員への対応として、産業保健スタッフとのオンラインでのビデオ面談を実施しています」(二見氏)

 実際に、仕事のパフォーマンスに病による影響が出た、あるいは出そうな場合にもいくつかの選択肢がある。同社の場合、まずもって部署・担当業務ごとに採用要件が定義され、そのポジションの役割や職務を遂行できることを前提として雇用契約が結ばれている。つまり、明確な分類はしていないもののジョブ型に近い運用をしている。

 「社員が病によって現ポジションでは職務継続が難しい場合でも、異動によって別の職種に就くことで働き続けることができる機会を、社員本人が自律的に検討できる仕組みがあります。当社ではグローバルで全部門・全職種のオープンポジションが社内外に公開され、逐次確認できるシステムを運用していますので、働き続けたいという意思に対しては、自ら機会を探せる環境も用意されています」(二見氏)

 また、病からの復職にあたっては業務上の配慮も細かく対応している。「主治医や産業医の意見と、部署側での業務の実態などを踏まえた復職時の勤務条件とを部門担当人事と調整することで、復職時のソフトランディングを図る配慮もしています。例えば復職後、一定期間の残業禁止や毎月単位で産業医面談を継続するなど、その病に合わせた個別の配慮を行っています」(二見氏)

社員を病による経済的な不安から解放する

 一方で、「病にかかったときには、休み、療養に専念することも非常に重要」だと二見氏は話す。

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