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スキャナ保存・電子取引の要件が緩和 「電子帳簿保存制度」の見直しポイント21年度税制改正(1/5 ページ)

» 2021年09月15日 07時00分 公開
[企業実務]

 2021年度の税制改正で、電子帳簿保存法の要件が緩和され、事前承認制度や適正事務処理要件の廃止などが行われました。そこで、この改正について解説します。

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 本記事は、2021年9月号に掲載された「スキャナ保存・電子取引の要件が緩和『電子帳簿保存制度』の見直しポイント」を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集し、転載したものです。


電子帳簿保存制度見直しの背景

 1998年に国税関係帳簿書類の保存方法等の特例法として電子帳簿保存法が施行されました。

 事前に納税地の所轄税務署長の承認を受ければ、税法で書面で保存することが規定されている仕訳帳等の帳簿データ(以下「帳簿データ」)や決算書類および発行書類控えなどのデータ(以下「書類データ」)を、一定の要件の下でデータのまま保存することが可能になりました。

 さらに2005年の電子帳簿保存法改正により、「スキャナ保存制度」が導入されました。

 これにより、事前に納税地の所轄税務署長の承認を受ければ、書面で作成して取引先に交付した書類の控えや、取引先から書面で受け取った書類を、一定の要件の下でスキャナ装置で読み取った画像データ(以下「スキャナ保存データ」)として保存し、紙の原本書類を廃棄することが可能になりました。

 電子帳簿保存法は、税法により書面で保存が義務付けられている帳簿や書類を、データで保存する場合のシステム要件や保存要件を定めていますが、事業者がクラウドシステムなどでやりとりする取引データやメールに添付された取引データなどのように、電磁的方式により授受する取引情報(以下「電子取引データ」)の保存義務を定めた法律でもあります。

 電子帳簿保存法上の帳簿書類等の分類は表1の通りです。

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 特に「スキャナ保存制度」については、スキャナ保存データと紙の証憑原本との同等性を担保するための法令要件が厳格であったため、事務負担等を考えるとなかなか制度利用に踏み切れない事業者が多く、その承認件数は低調に推移していました。

 このため、電子帳簿保存法はスキャナ保存制度の要件緩和を中心として、これまでに数度の法令改正を経て、今回の2021年度改正では、「帳簿データ」「書類データ」および「スキャナ保存データ」の事前承認制度そのものが廃止となりました。

 また、それ以外にも各法令要件に係る見直しが行われていますので、改正のポイントについて順に見ていきます。

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