攻める総務

社員の「心」と「体」をどう守る 総務が考えるべき「健康経営」のカギ「総務」から会社を変える(3/4 ページ)

» 2021年09月17日 05時00分 公開
[豊田健一ITmedia]

 直接的には、従業員のコロナ感染だ。軽症あるいは濃厚接触者となれば、2週間は自宅やホテルで待機することになり、仕事に大きく影響する。中等症となれば、肺炎が起きている。肺がダメージを受けていた場合、熱が下がって酸素濃度が通常に戻ったとしても、すぐに元の日常に戻れない。また、後遺症もあなどれない。咳、倦怠感、味覚嗅覚障害が残り、完治まで3カ月程度を要するといわれている。重症になると、人工呼吸器などを使用して、最悪の場合、死亡してしまう。

「動かない社員」をどう動かすか

 間接的には、在宅勤務が長引くことでの悪影響もある。まずは、生活習慣病の悪化である。在宅勤務となると、通勤しなくなり、ずっと家で仕事をしていれば、動くことが本当に少なくなる。そんな中で食べる量が変わらなければ、カロリーの過剰摂取になるのは明白だ。

 実は、通勤には「運動」という効果もさることながら、日の光を浴びるという大切な効果もある。それにより、心身が仕事モードへ切り替えられるのだ。つまり朝起きて、そのまま仕事をすると、切り替えが効かず生産性も上がらないのだ。総務としては、在宅勤務体制の中で、これまで以上に社員が運動できるような仕組みづくりが求められる。

 例えば、このような事例がある。ある企業では、以前から月間の歩数を競うイベントを開催していた。アプリをインストールして、個人ベースで記録する形だったため、コロナ禍でも問題なく開催できたという。ウォーキングシューズの購入費用補助もあり、機能性の高いシューズを履くことで、社員の歩くことに対するモチベーション向上にも資している。また、ビジネスチャットで各自の歩数目標を宣言するなど、新たなコミュニケーションツールとしても役立ったというからいいことづくめだ。

喫煙への対策は

 喫煙者にも注意が必要となる。いま多くの企業では、社内は全面禁煙であり、仕事中に喫煙するのは、なかなか難しい。もちろん、業務の合間を縫って、屋外などに設置されている喫煙所などに行くこともできるが、周りから白い目で見られることも多い。

 一方在宅勤務、さらに一人暮らしの喫煙者となると、喫煙を止めるものが何もない。規則もなければ、喫煙を注意する人もいない。ある意味、野放し状態、吸いたい放題である。ここは注意が必要だ。

テレワークで喫煙機会が増えた社員も多い?(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 ちなみに、コロナ禍前の企業における取り組みは、喫煙者自体への施策ではなく、受動喫煙の対策が主であった。従って喫煙場所を減らす、あるいは社内や屋内では全く喫煙できないような対策が多くの企業で見られた。

 一方、喫煙者への対応は、喫煙による害についての情報提供や啓発活動、例えば、情報提供であれば、健康増進法など、社会の禁煙化の流れやタバコの害に関して喫煙室の粉じん濃度や換気状況のデータを開示する。あるいは、禁煙方法や喫煙サポート情報の提供などがなされた。啓発活動であれば、タバコの害がきちんと認識できるポスターをシリーズ展開したり、毎月1回程度の禁煙セミナーを開催し、実際に禁煙した社員の事例の紹介をするのもいいだろう。

 ただ、結局タバコは嗜好品であり、そこにまで強制的に踏み込むことは、総務としてなかなか難しかったのが実情である。コロナ禍においても、情報提供、啓発活動をすることで、個々人の意識変容を促すという基本方針には変わりがないと思われる。

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