クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ガソリンには、なぜハイオクとレギュラーがある?高根英幸 「クルマのミライ」(2/4 ページ)

» 2021年09月27日 10時35分 公開
[高根英幸ITmedia]

高性能ガソリンの由来はターボと同じ

 クルマが生まれたばかりの頃の初期のガソリンは、低品質でもとの原油の性質にも影響を受けていた。圧力を下げた釜の中で原油を熱して、特定の沸点の成分に分離して精製する減圧蒸留というシンプルな製法は、基本的には現在も変わらない。それでも、その管理方法やその後の精製、重質油からのハイオクガソリンの改質や分解といった精度やブレンド技術は、今のように確立されてはいなかったようだ。

 19世紀終わりにクルマが誕生すると、瞬く間にエンジンが複雑化し、ボディも大型化していくことになり、1910年代には早くも、ガソリンの品質を高める必要に迫られることになる。

 さらに燃料に対する要求が急速に高まる事態が起こる。第一次世界大戦である。戦闘機の性能を向上させるため、エンジンを高度にチューニングする必要があり、それには高品質なガソリンが不可欠となったのだ。

 当時からレシプロエンジンの熱効率を高めるには、圧縮比を高めて燃焼圧力を大きくすることが考えられていた。しかし低品質なガソリンでは、圧縮比を高めると狙っていたタイミングより早く燃焼が起きてしまうノッキングが起こってしまい、エンジンを破壊する原因になってしまう。

 こうした理由で高性能なガソリンは軍事利用のために瞬く間に開発された。しかしコストを度外視した軍事用とは異なり、民生用である自動車用のガソリンにはそれほどコストを掛けられない。そのためオイルメジャーと米国ビッグスリーは安価にガソリンのオクタン価を向上させて、エンジンのノッキングを防ぐ方法を生み出した。それが有鉛ハイオクである。

 ちなみに第二次世界大戦では、高高度での飛行を可能にするために爆撃機のエンジンに過給器を組み付けることが考案された。これが現在、クルマで使われるターボチャージャーのルーツだ。

 カーナビのGPSやコンピュータも然り。工業製品の高度な技術は、まず軍事利用のために開発され、技術の公開やコスト低減を経て民生化されるのが定石だったのだ。

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