列車が来なくとも、「駅」は街のシンボルであり続ける杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2021年10月17日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 このゲームが鉄道を知る手がかりになるという話を16年にも、「ゲーム「A列車で行こう」で知る鉄道の仕組み」として書いた。

 この時は経営効率を高めるために列車の運行頻度を高める仕組みを紹介した。今回は駅に焦点を当てる。ゲームの中で「駅」は2つの役割を持つ。「乗客と街の活力を変換する装置」と「列車を制御する装置」だ。

 「乗客と街の活力を変換する装置」を説明するために、ゲームを起動してみよう。あらかじめ大都市が存在するマップを選び、大都市の駅Aから線路を延ばし、未開発の土地に駅Bを作る。そして2駅間に列車を走らせる。B駅周辺は目的地がないから、初めは列車の乗客が少ない。

大都市から線路を延ばし、貨物列車で資材を搬入しつつ、旅客列車を運行する(「A列車で行こう9」のプレイ画面 (C)2021 ARTDINK. All Rights Reserved.)

 しかし、貨物列車で建設資材を運んでしばらく放置すると畑が発生する。物好きな人が列車に乗ってやってきて、そのうちの何人かが農業を始めた。さらに列車を運行し続けると畑が広がる。店ができる。戸建て住宅ができる。アパート、マンションが建つ。オフィスピル、デパート、娯楽施設も増える。

降車客が都市を発展させていく(「A列車で行こう9」のプレイ画面 (C)2021 ARTDINK. All Rights Reserved.)

 そして、それぞれの建物から乗客が発生し、列車に乗る。当初は駅A発駅B行き列車しか乗客が乗らず、一方通行だった。しかし、だんだん逆向きの乗客も増えてくる。鉄道の売り上げは2倍になってさらに増えていく。

 ゲームの中で「駅」は、「旅客列車の客を降ろして、町のエネルギーに変換する」役割と、「町で発生した発展エネルギーを乗客に変換して旅客列車に乗せる」役割を担っている。

 乗客は列車で別の町へ行き、そこで降りて町のエネルギーになる。この循環を維持すれば、街は発展し、乗客も増えて、鉄道会社の経営が安定する。これはリアルな世界にも通じる。

 列車の運行が減るとどうなるか。不便な土地に人は住まない。建物が消えていく。過疎化だ。これもリアルな世界では起きている。

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