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「課長職を立候補制に」 SOMPOの新制度は「上司のお気に入りばかりが出世」にならないのか? 人事を直撃選ばれなかったらどうなる?(3/3 ページ)

» 2021年10月20日 10時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
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自分のキャリアを深く考えるきっかけになる

 経営陣、人事部は同様の危機感と課題認識を共有し、同じ方向を向いているというが、社員はやはり「方向性自体は良いと思っている一方、自分が立候補するかという自分事となると、どのような選択をすればいいかと悩んでいる社員が多い」(鈴木氏)という。ただ、それも有意義な機会だと鈴木氏は言う。

 「当社はこれまで、社員が自らのキャリアを深く考えて選択、決断する機会がそれほど多くありませんでした。せいぜい、人事部に異動の希望を出すくらいでしたが、今回、手を挙げるかどうかという選択をすることになる。今いる課長のみなさんも、自らのポストに手を挙げることも含めて選択することになりますので、自分事になると深く考えていますね。でも、考えること自体、非常にいい機会になっていると思っています」(鈴木氏)

 とはいえ、戸惑いを感じている従業員のケアは欠かせない。現在は1on1にかなり注力しているという。定期的にMyミッションを上司やメンバーと話し合い、どんな人生、キャリアを歩みたいか、対話の中で見出す取り組みを継続して行っている。上長側に1on1の研修も導入するなど支援は徹底しているが、今後も強化していくという。

 また、会社にどんなキャリアがあるのかを見える化する。立候補の対象とするポストは、ミッションを全て明確化し、必要なスキルも全て開示する。そうすることで、5年後、10年後を目指してみようという人たちの道標になることを期待する。

 従来型の会社主導のジョブローテーションは、自分がどんなキャリアを歩いていくか想像できた。

しかし、今回の制度導入で「ここから先は白紙です、キャンバスがあるので描いてくださいということで、大きな方向転換です」と三浦氏は言う。

 「現在の課長職は20年強、従来のカルチャーに馴染んでいる中で、定年までの残り15年ほどが新しいルールになるのですから、良い意味でも悪い意味でも考えます」(三浦氏)

 なお、SOMPOホールディングスはジョブ型、立候補制に切り替わるが、グループ会社の損保ジャパンは引き続き総合系を続ける。今回、立候補しない課長職の社員は課長から外れることにいはならず、総合系の課長のまま残る形だ。

やはりコミュニケーションが要

 三浦氏は「双方向性が全て」という。上から下、下から上、横、いろんな方向で権限を持つ人をチェックする機能、人事部の行司役としての機能も重要だという。

 ただ、「チェック機能をどうしていくかは、率直に申し上げてこれからの課題」(三浦氏)とも語る。北米でジョブ型は浸透しているが、前述の通り外部に転職マーケットがあることで成り立っている部分がある。日本が北米と同じように運用すると、部長や役員の権限があまりにも強くなる。

 「当然、その課題認識を持っています。いろんな仕組みを間に挟み込んでいって、そうならないように仕組み化していきたい」(三浦氏)と気を引き締めるように語った。

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