では、男性マネジャーから、この観点でリーダー候補の女性部下をどう支援できるでしょうか。1つはリーダーの疑似体験をしてもらうことです。マネジャーという役職ではないけれども、プロジェクトなどでリーダーを任せてみる。そこで小さな成功を体験してもらい、自分はマネジャーもできるかもしれない、と自己効力感をつけてもらうのは有効です。
もう1つはお互いに棚卸しをしてみることです。部下はマネジャー業務をとてつもなく難しく大変なものであると誤解しているケースがあります。そのため、実際のマネジャー業務を可視化し、かつそのメリットを伝えることが重要です。例えばマネジャーだからこそ、自分の仕事量や納期も調整しやすく、融通が利きやすいということもあるでしょう。
また棚卸しは部下のリソースという観点でも行います。その際、アメリカを代表するキャリアカウンセリングの理論家・実践家ナンシー・K・シュロスバーグが提唱している4Sというフレームワークが有効です。これは転機が訪れた際にそれをどう乗り越えるか考えるために作られたもので、Situation(状況)、Self(自身)、Supports(支援)、Strategy(戦略)に基づいて、どんなリソースが自分にはあるのかを検討してもらいます。これらの相互棚卸しをすることによって、「意外とできる」という気付きを与えられ、マインドセットが少し変わるかもしれません。
そして何よりも重要なのは、部下が成長しているということを具体的に指摘し、気付かせてあげることです。人は自分自身ではなかなか成長には気付かず、いつまでも「まだできない」と過小評価してしまう傾向があります。日々のコミュニケーションを通して、具体的な成長をフィードバックすることは、大きな自己効力感につながります。
その上で、いつでも支援できる体制があること、完璧でなくてもまずはやってみようということを伝えておくことで、部下にとってもチャレンジしやすい環境が整うと思います。完璧でなくてもよいということをお互いが認識できて、機会が与えられていれば、自然と女性リーダーは組織の中で育ち、良いロールモデルが生まれ、好循環を作ることができるはずです。
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