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美大生の進路はどうなっている? キャリアの実態人材バリュー(2/4 ページ)

» 2021年12月12日 10時57分 公開
[増沢隆太INSIGHT NOW!]
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美大生の進路の8割以上は

 これは美大でも差があるかと思いますが、秋田美大の場合、少なくとも私がキャリア講座を担当していた数年前までは、1学年約百人の内、約8割近くが会社員となりました。事務系やIT系、販売系など職務は様々ですが、中堅大学の進路を大きく差があるとはいえない、普通の企業に就職しています。

 そもそもまともな大学であれば就職率100%はあり得ません。旧帝大など上位校ですら、大学院進学や退学などもあり、100%就職することはないのです。ということからすれば、8割近くは会社員に進むという秋田美大の進路はきわめて健全なものといえます。

 会社に就職した場合、デザインのような専門イメージそのままの職に就くだけでなく、昨今はゲーム業界などIT能力だけでなく作画能力が必要な職務でも強みを発揮しています。ITやゲームは、日本の経済界でも優等生な業界なので、進路として期待が持てますね。ただしキャリアの授業でも注意喚起をしていますが、デザイン系クリエイティブ系業務の中には法人になっていない自営的な事務所や、社員ではなく独立業者として請負い形態で仕事をするなど、いろいろ複雑な就業形態があるので、労働法に疎い学生はちゃんと契約を理解するよう促しています。

 すべてがクリエイティブな職務ではなく、デスクワークや販売・接客業など、直接美術と関係なさそうな業務に就く学生も、感覚的には2〜3割以上はいるのはでないしょうか。

 ちなみに私が教えていた数年間で、作家としてデビューした学生は年間1人程度でした。就職せずいきなり作家という道は相当に高いハードルですし、中には伝統工芸の世界に、弟子入りのような形で進む者もいるかも知れません。いずれにしても、秋田美大の就職進路の8割方が会社員というのはきわめて「普通」で健全なものでした。

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