グランデュオ立川店を訪問して驚くのは、さまざまな利用シーンを想定した多彩な店舗空間の設計だ。
買い物などの荷物があってもゆったり座れる1.5人席、おしゃべりに適したテーブル席、落ち着いてくつろげるソファ席、電源が付いてテレワークができるカウンター席など、バラエティに富んでいて、その日の気分によって選べるようにしている。
スタバのように、MacBookなどを広げて仕事や勉強をしている人はほとんど見ない。しかし、いずれはゴンチャもそうなりたいとアピールしているような店づくりだ。
「ルノアール」のようなビジネスの打ち合わせに使えそうなソファ席を導入している店も、その後オープンしている。
商業施設運営者としては、コーヒーが苦手という女性も多いことから、シアトル系などのコーヒーショップ以外の喫茶チェーンにも入ってもらいたい。お茶を提供するゴンチャがそのニーズにはまった面がある。
日本マクドナルドでも、14年の異物混入事件に起因する売り上げ急降下から脱出するために、内装のデザインを一新した例がある。店舗デザインの大きな変更は、需要を喚起する活性化効果がある。
原田氏はゴンチャのメニュー改革にも着手した。
かつてゴンチャは、「ブラック(紅茶)ミルクティー」の「パール(タピオカ)」トッピング、いわゆる「タピオカミルクティー」しか売れない店で、他のお茶やトッピングのメニューは不要かと思えるほどだった。そのため、ブームが終われば即、大量閉店するだろうと危惧されていた。
お茶やタピオカのクオリティーが高かったから生き残ったともいえるが、顧客層を広げ、来店機会を増やそうと意識的に取り組んだ成果が出ている。
グランデュオ立川店は、日本のゴンチャでは初めてコーヒーを導入した店だ。顧客層を広げるのが狙いだった。ゴンチャがコーヒー嫌いな人でも行ける店であるのは間違いないが、コーヒーを飲みたい人を排除する必要もないとの判断だ。
04年から13年にかけての原田社長時代の日本マクドナルドは、100円コーヒーを売りまくって、ついでの需要でハンバーガーも売るビジネスモデルで、過去最高の売り上げを達成している。つまり、ハンバーガーショップから、ハンバーガーカフェ化して成功した。
01年に3600億円に達していた年商が03年には3000億円を切るまで下がっていたが、出来立てを売ることにこだわる「メイド・フォーユー」の浸透でV字回復。08年に発売した「プレミアムローストコーヒー」が100円と思えないクオリティーと評判を呼び、4000億円を突破するまで伸びた。
カサノバ社長時代における一時期の低迷は、異物混入だけでなく、原田社長時代の人材流出などの将来に禍根を残す経営姿勢に起因するともいわれている。しかし、往年の原田氏が名経営者と讃嘆されていたのは事実である。
原田氏は、ゴンチャへのコーヒー導入で、「夢よもう一度」と考えたのか。実際、ほとんど女性しか来なかった店に、コーヒー導入後は男性客も増えてきている。カップル、ファミリーでも楽しめる店になってきた。ゴンチャのコーヒーの売り上げは、全体の1割あるのかも疑わしいが、少しでも客層を広げる効果は出ていると思われる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング