新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/11 ページ)

» 2021年12月17日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

在来線のほとんどが赤字路線

 JR東海は路線ごとの収支や利用客数を公開していない。国土交通省は平成30年度の鉄道統計年報を公開しており、路線ごとのデータも参照できる。平均通過人員とは、その路線の1年間の利用者数を365日と距離で割った数だ。1日1キロメートル当たりの利用者数の目安となる。少し古いデータだけれども、JR東海の在来線の平均通過人員をJR東日本、JR西日本の路線と比較してみた。

  • 東海道線:熱海〜米原、341.3キロメートル、平均通過人員4万7686人/日

 東京〜神戸間589.5キロメートルのうち、中央部の熱海〜米原間が東海エリアとなる。主要都市は名古屋市と静岡市で、この2駅へ向かう通勤通学需要が大きい。

 東海道新幹線と並行しているため長距離輸送の役割はなく、長大なローカル線だ。平均通過人員は支線の大垣〜関ヶ原間、大垣〜美濃赤坂間が含まれる。JR東日本では川越線の5万5729人/日、横須賀線の6万2944人/日以下、JR西日本では阪和線の10万6959人/日の半分以下だ。

  • 中央線:塩尻〜名古屋、174.8キロメートル、平均通過人員2万9958人/日

 中央線は東京〜塩尻〜名古屋間の長い路線だ。そのうちJR東海の管轄は、塩尻駅より西側の「中央西線」と呼ばれる区間だ。名古屋〜中津川間は通勤圏として運行本数が多く、中津川から塩尻方面は運行本数が激減する。

 平均通過人員は全区間を対象としているため、実態は名古屋寄りに偏っている。JR東日本では千葉と房総半島を結ぶ外房線の3万5132人/日、JR西日本ではJR難波と亀山を結ぶ関西線の3万3032人/日の状況に似ている。

  • 関西線:名古屋〜亀山、59.9キロメートル、平均通過人員1万3983人/日

 関西本線はJR難波と名古屋を結ぶ路線だ。このうち亀山駅から東側がJR東海の管轄となる。全区間が名古屋への通勤圏で、特に四日市〜名古屋間の需要は大きいはず。しかしほとんどが単線区間で、複線の近鉄名古屋線が平行している。JR東海の利用者は少ない。平均通過人員はJR東日本の篠ノ井線の1万2293人/日、草津線の1万2175人/日が近い。

  • 武豊線:大府〜武豊、19.3キロメートル、平均通過人員9456人/日

 東海道線の大府駅から分岐して知多半島東岸の武豊を結ぶ。反対側の西岸には中部国際空港がある。明治時代の東海道線建設において、武豊港から資材を運搬するために作られた。現在は名古屋への通勤路線でもある。

 JR東海も力を入れており、新型ディーゼルカーを投入し、その後全線電化された。中核都市の半田には名古屋鉄道が到達しているけれども、運賃はほぼ同じで所要時間が短いこともあり乗客は多い。惜しむらくは全線単線で運行本数が少ないことだ。JR東日本の八高線の8892人/日より多く、JR西日本の呉線の9411人/日と同程度だ。

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