新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/11 ページ)

» 2021年12月17日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 名松線は09年に台風被害で家城〜伊勢奥津間が不通となった。名松線は04年にも土砂災害で不通となったし、国鉄時代の82年、75年、59年も被災して不通となった。JR東海はこうした状況を考慮し「鉄道の被災復旧の繰り返しでは公共交通の責任を果たせない」として、家城〜伊勢奥津のバス転換を決めた。

 しかし沿線自治体は鉄道の存続を要望した。そこで「沿線自治体が被害を受けた線路周辺の自然環境を修復し、その後の維持管理も自治体が責任を持つ」という条件で鉄道を復旧させた。自治体にとっては大きな負担だったけれども、いまなら当該区間を第三セクター化するとか、自治体が設備を保有する上下分離になったはずで、自治体負担の小さな形で決着している。

 参宮線についてはJR東海に廃止の意向はなかった。しかし、伊勢商工会議所会頭から「自動車による観光に不便」として、参宮線の廃止、撤去と車両基地の1000台規模の駐車場整備が提唱された。これは会頭と伊勢市長、地元選出国会議員の懇談会で文書によって示されていた。背景には式年遷宮の渋滞予測、近鉄に比べて運行本数も利用客も少ないことがあったようだ。ただし、この提案がそのままJR東海に申し入れられることはなく、立ち消えとなっている。

奇跡の復活を遂げた名松線を応援する市民団体「名松線を元気にする会」。イベント、写真集配布など活発に活動している

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