コロナ禍において、営業活動のなかでも特に、顧客の立場からすると「不要不急」である新規顧客開拓の営業活動(以下、「新規開拓」と言います)が大きく影響を受けています。
まず、新規開拓と既存顧客取引の違いを確認しましょう。
既存顧客との取引では、売り手と顧客の間にはすでに人間関係ができています。売り手は顧客の仕事の進め方や困りごとを理解しているので、それらの情報をもとにして、直接会うことができなくても営業活動を進められます。
一方、新規開拓では顧客との人間関係ができておらず、顧客が抱える事情も理解できていません。
コロナ禍では、対面による商談が制約される一方で、オンライン商談が急速に普及しました。
オンラインが得意なのは、きちんと筋道を立てて理解を得る「理」の営業です。具体的には、言葉や資料・動画を見せて説明する、情報を共有する、そして、相手の反応を確認しながら理詰めで説得することです(図表1)。人間関係が確立している既存顧客取引は「理」で進められる部分が多く、オンラインでも十分に行うことができます。
一方、感情を込めて伝えて、納得を得る「情」の営業は、リアル(対面)商談が得意とするところです。例えば、実物に触ってもらいながら、身ぶり手ぶりを交えて熱く説明する。誠意をもって取り組む姿勢に好感を抱いてもらい、信頼関係を築いて相手の本音を聞き出す。これが新規開拓に必要な人間関係づくりです。
また、それまでの取引先から目の前にいる新しい取引先に替えることに、顧客は心理的に抵抗を感じがちです。商談のクロージングの場面では、「理」で説得されても気持ちが納得できていない状態なので、そこを「情」で動かして「イエス」と言ってもらうのです。
まさにこの「情」の営業がコロナ禍で大きく制約され、新規開拓のボトルネックとなっています。そのボトルネックをいかに解消するかが、ニューノーマル時代の新規開拓の一番のテーマです。
実は、それには営業部より、むしろ購買、製造、財務・経理、広報・宣伝、情報システムなどの非営業部署が力を発揮する部分が少なくありません。
図表2は、新規開拓で用いられる主なアプローチ法と、コロナ禍での有効性をまとめたものです。コロナ禍で有効な手法として、「紹介」と「デジタルマーケティング」の2つがあげられます。
「紹介」がコロナ前から有効なアプローチ法として確立されたものであるのに対し、「デジタルマーケティング」はコロナ禍で急速に進展している手法です。
本稿では、この2つの手法について説明していきます。
© 企業実務
Special
PR注目記事ランキング