インターネットが普及したことで、顧客の購買プロセスが大きく変わりました(図表3)。具体的に言うと、顧客がニーズや課題を認識したときの「最初の行動」が変わったのです。
以前は「よく顔を出す営業担当者に電話やメールで相談」していましたが、いまでは「顧客自ら検索して情報収集」するようになりました。
そのため、営業担当者に声がかかったときには、顧客はインターネットで集めた情報をもとに比較検討を行い、購入予定の製品・サービスの一次選考をほぼ終えている状態になりました。一次選考に残った企業に声がかかり、企業が二次選考に向けて提案していく購買プロセスに変わったのです。
そこで、「知らない間に一次選考に落とされたら大変だ」と考えた企業側は、図表3の破線で囲んだ「顧客がニーズ・課題を認識」して「顧客自ら検索して情報収集」することを先回りして察知することが重要だと気付きました。
その察知ツールとして、マーケティングオートメーション(以下「MA」と言います)の普及が進んでいます。
MAとは、新規顧客の獲得や見込客の育成などを含めたマーケティング施策をサポートするためのツールです。分かりやすく言うと、「見込客管理システム」だと筆者は解釈しています。
MAにはいろいろな機能がありますが、主な機能を3つ紹介します(図表4)。ちなみに、MAにはリード、スコアリングなどのカタカナの専門用語が頻出しますが、ここではこれらの専門用語を封印して説明を進めます。
1つ目の機能は、見込客情報の収集と蓄積です。
従来は、展示会やセミナーに来場した見込客リストは、Excelファイルなどの形で、関係部署がそれぞれ所持していました。そして、そのリストを各部署が独自に加工して、展示会・セミナー案内や営業活動の履歴を管理していました。
MAでは、見込客情報をクラウド上のデータベースに集約して一元管理することができ、見込客の追加や変更、見込客への営業活動履歴が上書きされていきます。
2つ目は、見込客への働きかけと関心度を向上させる機能です。
例えば、見込客に対して展示会・セミナー案内、新商品情報、導入事例やお役立ち資料をメール送信したときに、興味を持った受信者がメールに掲載されたリンクをクリックすると、その履歴がMAに記録されていきます。ホームページのアクセス履歴についても、例えば、ある商品の導入事例を5分間見た後に商品仕様書をダウンロードした、といった情報が、MAの画面に一覧で表示されます。
さらに、見込客の関心度に応じた情報をタイミングよく提供して、見込客の関心度を上げていく活動を継続します。
3つ目が、関心度の高い見込客を選定する機能です。
MAでは、セミナーに参加したら1P(ポイント)、ホームページの導入事例の記事にアクセスしたら2P、商品仕様書を閲覧したら3Pというふうに、ポイントを設定します。累積ポイントが一定の水準を超えると、MAが「関心度が高い見込客」であると判断します。
MAで関心度が高いと判定された見込客へ、インサイドセールス(内勤営業員。外回りする営業員の対義語)がメールや電話でアプローチし、ニーズなどを聴き取ったうえで訪問のアポどりを行います。ここまでお膳立てすれば、営業員は初回訪問から、スムーズに商談に入ることができます。
MAには多くの種類があり、営業支援システム(SFA)との連動が強みのものや、展示会やセミナーのようなリアルイベントが得意なものなど、それぞれに得手不得手があります。MAを導入する際は、自社がどのようなマーケティング活動を行い、営業部はどんな情報を必要としているのかなど、現状をしっかり把握したうえで、最適なMAを選ぶ必要があります。
また、MAを導入すれば終わりではなく、MAを核にしてどのようなマーケティング活動の仕組みをつくり、見込客をどのように営業部へ送客していくかという、マーケティングと営業活動全体の設計図を描くことが重要です。
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