企業からの送金によって残高にチャージされる仕組みは、Kyash自体のビジネスにとっても後押しとなる。
Kyashの事業モデルは、チャージされた残高を決済で利用するときに加盟店が支払う手数料がメインの売り上げだ。ところが、残高にチャージするためのコストが高く、これをKyashが負担していたからだ。クレジットカードチャージであれば加盟店として手数料を負担するし、銀行からの口座振替であれば口振費用も負担していた。これが企業送金によって残高にチャージされれば、Kyash側の負担がなくなる。そのため、Kyashが企業送金に課す費用も実費に近い最小限となっている。
銀行を介さない報酬支払いは、銀行振込に比べて利便性が高い。昨今はAPIなども整備されつつあるものの銀行振込はアプリへの組み込みが難しく、高コストで遅いからだ。ただし、Kyashが提供するような仕組みは、現状、報酬の支払いは可能なものの、給与の支払いには使えない。法律上、現金か銀行口座振込しか認められていないからだ。
そのため多数の配達員を抱える事業でも、雇用関係にあるアルバイトに対しては、Kyash法人送金の仕組みは利用できない。あくまで業務委託など給与ではない形の支払いにしか使えないのが現状だ。
ただし国は給与のデジタル払いについて議論を進めており、副業や非正規労働者、外国人労働者向けに、解禁される見通しだ。そのタイミングでは、再度Kyash法人送金の市場は大きく広がるだろう。
大手マーケットプレイスでも銀行を介さず売上金を送金する仕組みがある。ヤフーが運営するヤフオク!では、売上金を銀行口座に払い出すほか、決済サービスPayPayにチャージすることも可能だ。またメルカリでは、売上金は自動的に同社の決済サービスメルペイの残高となり、そのまま決済に利用できる。
こうした動きが広がる中、決済サービスまで自前で持たない事業者にとっては、Kyash法人送金はユーザーの利便性を上げる仕組みになるだろう。デリバリーサービス以外にも、Kyashはマーケットプレイス、仮想通貨、自治体、家事代行、クラウドソーシング、動画配信などの事業でも提携を予定している。
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