ジョブ型雇用では、どんな人材育成の仕組みが必要なのか?いまさら聞けないジョブ型雇用(2/3 ページ)

» 2022年01月28日 07時00分 公開
[森健ITmedia]

 例えば、オンライン会議はチャットやブレイクアウトルームなどの機能を駆使した新たなVILT(Virtual Instructor Led Program)形式の研修を可能にしました。チャット機能があると、他の参加者の発言を待たずに自由に発言ができます。ブレイクアウトルーム機能を活用すると、参加者の中からさまざまな組み合わせでの小グループが容易に形成できます。

 また、オンライン会議でコーチとの個別のコーチングや、遠隔地にいたりリモートワークが多かったりする部下との1on1ミーティングなども効果的に行えるようになっています。さらに、自身の専門性のニーズに合わせたEラーニングも、テキストだけでなく動画や対話などをシームレスに組み合わせて有効な学習体験ができる、より高度なものへと進化しています。人材育成を行うための多彩な仕組みが最新の情報技術を用いて提供されるようになってきています。

 次に、情報技術によって人材育成を個々のニーズに応じてカスタマイズして提供しやすくなります。全員一律の人材育成を行うメンバーシップ型雇用であれば学びのメニューは皆同じですが、ジョブ型雇用が進展していくと個々のジョブに求められる専門性に応じてラーニング・ジャーニーをカスタマイズすることが求められます。情報技術は、膨大な学びのコンテンツから個々の学びの段階や機会に応じたタイムリーな育成メニューの提供を可能にします。個々の従業員に対して多様でカスタマイズされたメニューを提供していくためには、専門性を確保するさまざまな品ぞろえをアップデートして用意することが重要です。

 そのためには、情報技術の進展を積極的に取り入れた、高度なラーニングマネジメントシステムを効果的に活用することが鍵となります。社内独自の育成コンテンツを使うにせよ、社外の汎用的なコンテンツを使うにせよ、ユーザーにとって使いやすく、メンテナンスが容易なシステムをプラットフォームとして活用することによって、多くの従業員が使いやすい人材育成メニューを提供できるようになります。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 そして、情報技術を活用して確立されたプラットフォームを適切に活用することで、費用対効果が高い人材育成も実施できます。カスタマイズしたラーニング・ジャーニーを可能にするシステムは大規模になりがちです。個々の企業が膨大な労力をかけ自社に最適なシステムを構築しようとすると、多額の費用が掛かるだけでなく、ビジネスの変化がますます激しくなっている中でメンテナンスの負荷も重くなります。

 ジョブ型雇用が進展することによって、会社は違えどもジョブが同じジョブであれば、必要な人材育成の共通性は高まります。従って、ジョブ型雇用ではジョブに対応する人材育成のラーニング・ジャーニーを持つプラットフォームを利用し、これを出発点に自社の独自性を加味していくことで、自社に合う費用対効果の高い仕組みを構築できます。その際、ビジネス環境の変化を適切に捉えたメンテナンスを行っているプラットフォームを活用すれば、さまざまな状況に応じた人材育成を有効かつ持続的に行うことが容易になります。

 さらに、情報技術によって、研修などのイベントにとどまらず、日々の仕事を通じた人材育成を行うための多彩な仕組みが提供できるようになってきています。例えば、スマートフォンやタブレットなど身近なデバイスでコーチとコミュニケーションを取ったり、リアルタイムでの育成支援を得たりすることも可能になってきています。

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