そもそもどういった経緯で、「魔法の虫めがね」を開発することになったのだろうか。きっかけは、2020年2〜8月にかけて開かれたハッカソン(技術開発コンテスト)である。その場にエンジニアが集まって、さまざまな意見が飛び交った。「家にある本をレコードプレイヤーのように聞くことができないか」といったアイデアが出たものの、コストのことなどを考えると、メンバーから「実現するのは難しいなあ」といった声が出てきた。
話がなかなか進まないなかで、あるメンバーが「子どもの本に虫めがねが付いていて、息子がそれを使って大人の本を読んでいるんですよ」といったコメントがあった。その意見をヒントに「何かをのぞいて、それを朗読してくれるデバイスがあれば、面白いかもしれない」といった話で盛り上がり、開発を進めることに。
プロトタイプをつくったところ、周囲からは「いいね」の声があった。実際、子どもに使ってもらったところ、棒が太くて握りにくかったり、ボタンを押しづらかったり、さまざまな課題が出てきた。このほかにも「こうしたほうがいいのでは」「ここはダメだな。前のほうがいいよ」などの指摘が出てきて、そのたびにどんどん改善していった。
20年12月、埼玉県の三郷市で開かれた絵本イベントに「魔法の虫めがね」の試作品を持ち込んで、子どもに使ってもらった。そのとき、開発に携わったメンバーは、3つ不安を感じていた。(1)子どもたちは楽しんでくれるのか(2)デバイスはきちんと動いてくれるのか(3)親は子どもに使ってもらいたいと思うのか、である。
で、結果はどうだったのだろうか。「魔法のめがね」を手にした子どもちたは、絵本だけでなく、周囲にあるモノもどんどんのぞいていったのだ。心配していた(1)の「子どもたちは楽しんでくれるのか」はクリアした。(2)の「デバイスはきちんと動いてくれるのか」はどうだったのか。大きな不具合はなかったものの、「ヒヨコ」と「カスミソウ」が何度も表示される事態に。
ヒヨコやカスミソウをのぞいているわけでもないのに、なぜか表示される。原因を探っていくと、子どもたちはボタンを押すときに、予想より強く押していることが分かってきた。そのとき手ブレが生じるので、AIは対象物を毛羽だったモノとして認識し、「ヒヨコ」や「カスミソウ」を表示していたのだ。その後、この部分は改善して、いまはヒヨコが「ピヨピヨ」と鳴くことはなくなったという。
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