現在、中国では邦人10人以上がスパイなどの容疑で捕まっているといわれている。仕事などで行くビジネスパーソンは誰でも同じような容疑で捕まるリスクがある。強権的な国だけに、当局のサジ加減ひとつでどんな扱いを受けるか分からない。
そこでわれわれが注意すべきことがある。1つは、写真撮影である。中国では公共の場所でむやみに写真を撮るのは控えるべきだろう。観光地など、周囲の観光客などが撮影をしていれば問題はないだろうが、街角であっても写真撮影禁止の場所が少なくない。
空港や公的機関、政府系建物、軍事関連施設なども注意が必要で、どこにどんな建物があるかも分からない。まさに写真が見つかれば「スパイ容疑」として捕まる可能性がある。
貴重な書物や文書などにアクセスしたり保持したりすることも、スパイ容疑などに問われる可能性があるので注意したほうがいい。特に中国と外交的に揉(も)めた国は、見せしめのように出身者がスパイ容疑で捕まるケースが起きている(例えば最近なら、カナダ人やオーストラリア人)。そういうタイミングも注視しておいたほうがいいだろう。
「スパイなんて自分とは関係ない」ビジネスパーソンは多いと思うが、ここまで見てきた通り、中国ではいつスパイによる情報収集・スパイ工作に巻き込まれるのか分からない。それはサイバー空間上でも実世界でも同じ。性善説は通用しないので、会社やビジネスパーソンは自覚を持つ必要がある。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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