攻める総務

「なくす」と「変える」で考えてみる 総務から会社組織が生まれ変わるカギ「総務」から会社を変える(3/3 ページ)

» 2022年03月11日 05時00分 公開
[豊田健一ITmedia]
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 先に、自走組織とは、自律的に判断し仕事をする組織、そのように定義した。それを総務に置き換えると、誰から指示されるわけでもなく、自ら必要と思われることを実践していく組織、ということになる。この考えは、当連載で継続して重要性を発信してきた「戦略総務」そのものである。そもそも戦略総務とは「総務が自ら考え、自ら会社を変えること。そのために、まず、総務自身が変わること」であった。

 一方で、悲しいかな現状の総務は、「指示されて動く組織」「何かいわれない限り変化しない組織」が多いように感じる。決められた通りに行う、ルールを徹底するという点はどんな組織においても必要である。しかし、変化の激しい現在において、何より自ら変化することが重要だ。会社の基盤を担う総務が変化しないで、会社全体が変化に適応できるだろうか。総務こそが自走組織となる重要性がここにあるのである。

 しかし、いきなり総務という組織が自走組織となることは難しい。まずはそこで働くメンバーが自走していくことがスタート地点となる。決められたことを粛々と各人が行う、という意味での自走ではなく、環境適応の為にどのように変化するかを、各人が考え行動する、という意味での自走である。となると、必要なことは、シンプルに「考える」ことである。

 環境がどのように変化しているかを見定める。その変化が、自社にとってどのような影響を与えるかをイメージする。向かい風となるのか、追い風となるのか。環境変化を見定めた後の対応は、前例がなく、もちろん過去に経験を持つメンバーも社内はおろか、社外にもいないケースもある。これまでの先例・事例頼りな総務では、対処できない時代になっている。残る方法は、自ら考える、組織として考える、それだけである。

「なくす」と「変える」

 では、どのように訓練するか。まずは新たな事態に直面してから考えるのではなく、既存業務を題材に、考える訓練をしてはどうだろうか。新たな価値を生み出すのではなく、まずは既存の仕事をなくす、という発想で考えていく。

「そもそも、今ある社用車をなくしたら、現場はどうなるのか?」

「そもそも、本社をなくしたら、どうなるのか?」

「そもそも、私が行っているこの業務がなくなったら、どのような影響が社内にあるのだろうか?」

 あるいは、既存業務の方法を抜本的に見直したらどうなるか。生み出すのではなく、なくすのでもなく、「変える」という切り口でも考え抜いてみる。

 「そもそもなくしたら」という切り口で考えていくと、実は、その本質的な価値が見えてくるものであるし、「変える」という発想は改善そのものである。総務の自走組織とは、環境への適応もさることながら、常に改善し続けるという側面もある。常に変化していくのは、新たなものに限らない、既にあるものの成長も、一つの変化なのである。

 会社としての未来予想図でもある自走組織は、総務にとっては既に未来ではなく、今、必要な姿でもあるのだ。

著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)

株式会社月刊総務 代表取締役社長、戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、戦略総務研究所 所長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。

著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)『マンガでやさしくわかる総務の仕事』『経営を強くする戦略総務』


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