不妊治療助成に学生出産奨励……、政治家の「産めよ増やせよ」が「女に死ねというのか」と炎上浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/5 ページ)

» 2022年03月17日 12時35分 公開
[浦上早苗ITmedia]

育休を複数回取ると「ポストを奪われる」

 3月初旬に開かれた両会でも、女性政治家から少子化対策の提言が相次いだ。

 政協委員で弁護士の謝文敏氏は、産休の分割取得や男性の育休拡大に加え、2人目の子どもに月額600元(約1万1000円)、3人目には月額1000元(1万8000円)の手当支給を提言したが、すぐに女性たちから中国ならではのブーイングが殺到した。

謝氏の育児手当支給などの提言を報じる投稿(ウェイボより)

 中国は女性が結婚・出産しても定年まで働くのは以前から当たり前だが、1人しか産まず産休も2〜3カ月と短いため、出産時期をずらすことで代替スタッフを入れずに人繰りを回している職場が多い。筆者がかつて働いている職場も、申し合わせたように毎年1人が出産し、産休の数カ月はみんなで協力してカバーしていた。

 これが2人、3人の出産になると、「産む女性」と「産まない女性」「カバーする人々」の不公平感が生じかねないし、代替要員を入れれば産む女性にとってポストを奪われる脅威になる。寿退社や専業主婦の概念がほとんどない中国で女性が複数回育休を取得するのは、日本の男性の育休取得と同じくらい心理的ハードルが高い。

 3人目の出産に経済インセンティブを付与する政策は、謝氏だけでなく多くの地方政府が模索するが、今の少子化の原因は、若者の多くが「子どもは1人もほしくない」と考えていることであり、3人目への支援は貧困地区や農村でしか効果がないとも指摘される。

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