先の保険金支払いのグラフを見ると、興味深い点がある。オミクロン株の流行は確かにこれまでにない数の感染者を生み出したが、感染者の増加をはるかに上回る比率で保険金支払いが起こっている。保険契約者数に対する保険金請求者の比率で考えても、明らかに3月の保険金請求額は異常だ。
保険の基本的な考え方は、保険に入った人のうちの一定比率が罹患する前提で、集めた保険料を罹った人に保険金として渡す、助け合いの仕組みだ。どの保険でも、この“一定比率”が安定すれば事業としても保険商品としても継続が可能になる。逆に、保険契約者のコロナ罹患率が急上昇すれば、保険は成り立たない。今回、「コロナ助け合い保険」で起こったことはこれだ。
ではなぜ保険金請求が急増したのか。そのヒントとなる数字が、保険加入から保険金請求までの時間にある。なんと、直近では3〜4割が加入から14日以内に保険金請求を行っているというのだ。中には保険申し込み後、15分後や1時間後にコロナに感染したとして保険金請求をしている例もあるという。
これでは、コロナに感染してから保険に加入したのではないか? と疑われても仕方ない。そもそも保険加入にあたっては、一週間以内にPCR検査を受ける予定がある人は、加入NGという仕組みとなっていた。体調が悪化し「コロナかもしれない」という人は、PCR検査を受ける前に保険加入してはいけないということだ。
しかし「PCR検査を受ける予定があるか」は、本人の心の中でしか分からない。また、無症状無自覚な人が、保険に入って、たまたま検査を受けてみたら陽性だったということもあり得る。自分がもしかしたらコロナかもしれないと思いつつ保険に加入するのは、本来は告知義務違反ともいえるが、「その証明義務は当社(justInCase)にあるので、証明は難しい」というのが実態だ。
さらに全く無症状でも、コロナ保険に入ってPCR検査を受け、もし陽性なら10万円がもらえることから、「お得だ」という情報がSNSなどで出回ったことも大きい。さらにAERAdot.は3月17日に、無料PCR検査が拡大する背景は保険金目当てだという記事を掲載した。こうした情報の拡散が、コロナ保険の継続を困難にしたともいえる。
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