もう1つ気になるのは、なぜ日本では白マスクが主流なのかということだ。とりわけ韓国などはアイドルグループをはじめ多くの人が黒マスクを着けている印象が強い。山本さんは、日本で白マスクが主流となっている背景についても分析する。
「日本ではコロナ前は白マスクが一般的。医療従事者も白マスクがデフォルト(標準)となっていたように、『マスク=白』という文化が根付いている。もともと、冠婚葬祭の礼装などからも見られるように、日本では、白はポジティブな色であるという認識が強いということはあるかもしれない」
さらに、日本人の衛生観念との関連性についても言及する。
「日本人の清潔感に対する感度の高さ、そして清潔感をもっとも感じられる色は白であるという日本人特有の認識や感覚も影響している可能性がある。ある研究によると、『白には清潔感』があるという色彩感覚は、欧米はもとより、ほかのアジア諸国にもあまり見られない日本独特の色彩感覚であることが示されている」
「『白=無難なカラー』であることも、同調意識の高い日本人ならではの理由として考えられる」
コロナ禍を契機に、街中では黒マスクを着ける人もよく見かけるようになった。「マスクの着用が当たり前になったことで、マスクに個性・ファッションを求める意識が広まった」と山本さんは話す。黒マスクが市民権を得はじめたことで、黒マスクに対する抵抗感がなくなってきているデータもあるという。
「黒マスクいつの間に」が話題を呼んだ背景は、「日本では白マスクが主流」という前提をうまく利用しつつ、SNSの特徴を巧みに捉えながら、話題化に成功したヴィレッジヴァンガードの戦略的勝利だといえそうだ。
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