クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

マツダの世界戦略車 CX-60全方位分析(3)池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2022年04月27日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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透明度かスパイスか

 さて、そういうシャシー技術を積み上げてできたCX-60は、極めてクセの無い仕上がりになっている。「箸」の領域まで達しているかどうかは諸説あるだろうが、それを目指したエンジニアリングであることは乗ってみれば分かるだろう。素直でしっかりしており、安心して身を委ねられる上質感がある。反面、これ見よがしなものが何もない。

 マツダは自身が狙った、身体拡張のような穏やかでありながら精度感があり、違和感を限りなく減らしたクルマを作ることに成功した。極めて大人であり知的なゴールなのだが、一抹の不安もある、それは読者諸兄にはすでにおわかりの通り、大衆がそれだけの高邁な理念について来られるかどうかである。

 筆者が試乗したのはまだかなり早い段階のプロトタイプ。役員のひとりは「市販までにはまだまだ良くなります」と言った。それが更に透明度を上げて行く方向なのか、それともスパイスを振りかけていく方向なのか、いま筆者は注目して待っているところである。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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