KADOKAWAが宇宙産業に出資した理由 ホリエモンが描く「ニュースペース2.0」の世界とはホリエモン×夏野剛(4)(1/4 ページ)

» 2022年04月28日 14時27分 公開
[河嶌太郎ITmedia]
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 動画投稿サイト「ニコニコ動画」などを運営するドワンゴは、大型展示会「ニコニコ超会議」(超会議)を4月29日(金祝)と30日(土)に幕張メッセでリアル開催する。

 超会議は2012年から毎年4月末に幕張メッセで開く、「ニコニコ動画」をテーマにした参加型イベントだ。新型コロナウイルスの影響で20年と21年は会場開催を取りやめ、オンライン開催のみとしていた。22年は、3年ぶりの実地での開催となる。

インターステラテクノロジズの堀江貴文氏(左)とKADOKAWA夏野剛社長

 この3年ぶりの晴れ舞台を飾るのが、北海道大樹町にあるインターステラテクノロジズ(IST)だ。ISTはホリエモンこと堀江貴文氏が取締役ファウンダーを務める宇宙ベンチャーで、超会議では「超宇宙開発 POWERED BY ホリエモン」と題したブースを初出展する。

超会議では「超宇宙開発 POWERED BY ホリエモン」と題したブースを初出展する(ISTのリリースより)

 21年7月に宇宙空間に到達した観測ロケット「ねじのロケット(MOMO7号機)」と同型の実機に乗れる体験コーナーをはじめ、18年に炎上した「MOMO2号機」、MOMOの次世代機として開発を本格化させている超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の実物大バルーンなどを展示する予定だ。他にも、宇宙工学に関心ある学生や社会人に向け、技術者を招いたトークセッションも開く。

 超会議を主催するドワンゴを率いるのは、NTTドコモが運営していた「i-mode」の生みの親とされる夏野剛社長だ。夏野氏は、親会社であるKADOKAWAの社長も兼ねる。

 超会議の開催を前に都内のIST本社で、堀江氏と夏野剛社長が対談した。超会議に向けた意気込みを語ったほか、今後民間の宇宙開発が広がることで起こり得る「ニュースペース2.0」の世界について話題が及んだ。

夏野剛(なつの・たけし)KADOKAWA社長。1965年神奈川県出身。88年早稲田大学卒業、東京ガス入社。95年ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートンスクール)卒。ベンチャー企業副社長を経て、97年NTTドコモへ入社。99年に「i-mode」、その後「オサイフケータイ」など多くのサービスを立ち上げた。2005年執行役員、08年にNTTドコモ退社。セガサミーFD、トランス・コスモス、グリー、USENNEXTHOLDINGS、日本オラクルなどの社外取締役としても活躍。19年からは、KADOKAWA 傘下のドワンゴ社長に就任、業績をV字回復させた。21年よりKADOKAWA社長
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consultingファウンダーおよびロケット開発事業を手掛けるインターステラテクノロジズのファウンダー。現在は宇宙関連事業、作家活動のほか、人気アプリのプロデュースなどの活動を幅広く展開。2019年5月にはインターステラテクノロジズ社のロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機(MOMO3号機)」が民間では日本初となる宇宙空間到達に成功した。著書に『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』(SBクリエイティブ)、『非常識に生きる』(小学館集英社プロダクション)など

誰もが宇宙を簡単に使える世界

堀江: ロケットは、思っている以上にLinux的な広がり方をすると思います。いまみんなが考えている宇宙の利用方法は非常に限定的じゃないですか。これから変わりますよ。僕が思うに、スターリンクなどの動きは「ニュースペース1.0」的な動きだと思うんですよ。これがすぐ、2.0の世界になっていきます。

夏野: コストが下がれば絵が変わるってやつですよね。

堀江: というのと、今やっぱりわれわれが考えている革新的な衛星のシステムは、相当変わりますね。簡単にいうとピンポン玉サイズのアンテナ素子と電磁石でその間を保ちながら、例えばでっかい望遠鏡を作ったりできるわけです。いまジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の準備が進んでいますが、あれと同じような感じです。

 人間の細胞みたいに、こうした小さなものが大量に打ち上がることで、いろいろなことができるようになります。そういうものを僕は2.0の世界だと思っていて、2.0の世界は本当に今のスマホが出てきたようなインターネットの世界に近づくと思いますね。そうなってくると、面白いことを考える人たちが増えてくると思うんですよ。

夏野: コモディティになるということですからね。

堀江: 宇宙がコモディティになって、誰もが宇宙を簡単に使える世界がもうすぐくる。そうするとフェーズが変わると思います。でも、米国ってやっぱりすごい国だと思います。

夏野: 米国は戦略的にそれをやっているんじゃなくて、戦略的にそういうものが生まれてくるようにしています。

堀江: うん。仕組みを作っているんですよね。

夏野: そこなんですよね。「いやあ勝てないな」と思っているうちに本当に勝てなくなっちゃった。だって一時期は、一人あたりGDPだって全部、米国より上だったんです。1995年ぐらいまでは。そこから「だだ下がり」なんです。

観測ロケット「ねじのロケット(MOMO7号機)」は、2021年7月3日に宇宙空間到達を果たした機体と同型を、超会議で初展示するという。この機体は本来、20年7月に打上げ予定でしたが、エンジン点火器の不具合によって打上げ直前に安全装置が作動して自動停止した。その後、全面改良した新型7号機を21年7月に打ち上げたため、展示用としてIST本社で保管しているもの(リリースより)
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