さらに、ワンセグケータイ減少の決定打となったのが、16年から19年に争われたワンセグのNHK契約義務に関する裁判だ。その頃、自宅にテレビがなく、ワンセグ携帯電話のみを所有している場合に、NHKと受信契約を結ぶ義務があるかないかを争った裁判が複数件あった。そのうちの1件は、一審のさいたま地方裁判所が義務が「ない」と判断して特に注目された。NHKは控訴し、二審で東京高等裁判所が受信契約の締結義務が「ある」とする判決を下す。原告側は上告したが、19年3月、最高裁判所は上告を棄却し、ワンセグのみでも受信契約の締結義務があるとした東京高裁の判決が確定した。
ワンセグ機能付きの携帯電話にもNHK受信料契約の義務があるという判決が続くと、ユーザーはワンセグ対応機種を避けるようになり、端末メーカーもワンセグ機能をあえて搭載しないようになった。最高裁判決後の2019-2020年ドコモ冬春のラインアップは、スマートフォンが5機種あったが、ワンセグに対応していたのは1機種のみだ。
フルセグはまだしも、ワンセグは今となってはスマートフォン向けの機能としては物足りない。筆者がワンセグを最後に見たのは5年前ほどになるだろうか。そのときでも人の顔が判別できないほど画像が粗かった。ワンセグはすでにその役目を果たしたといえるだろう。
TVerのリアルタイム配信は、利便性向上とともに若者のテレビ離れを防ぐ狙いがあるようだ。少し古いデータだが、総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」において、15年11月に公開された電通総研の資料では、通信回線を使ってテレビ番組をスマートフォンやタブレットで視聴できるようになったら利用するかという質問に対し、若年層ほど高い利用意向がみられた。若者もネット配信されるテレビ番組ならスマートフォンで積極的に見る可能性がある。
しかし現在、動画配信サービスのプレイヤーは数多い。NetflixやAmazonプライム・ビデオはもちろん、ディズニーやアップルも配信サービスを充実させている。一方でYouTubeやTikTokといった動画投稿サービスも依然として人気だ。人の動画を見る時間は限られている。インターネットで見られるようになったテレビだが、果たして激戦区でライバルから時間を奪えるかに注目だ。
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。
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