上記では国の制度について触れたが、その最大の要因は、「住宅」にあるのかもしれない。21年度の東京23区内の新築マンション平均価格は過去最高の8449万円を記録した。この水準は1980年代のバブル景気を超えるものだ。首都圏の新築マンションの平均価格も6360万円まで高騰し、こちらも過去最高となった。
住宅を購入する際に自分がいくらまでの物件であれば無理なく購入できるかをはかる指標として、「年収倍率」というものがある。これは物件価格を世帯年収で割った値から算出するもので、基本的には「4倍」が余裕ある返済計画を立てられる相場だといわれている。
しかし、近年では住宅ローンの借入可能額を年収の7〜10倍で設定する例も増加している。その結果、物件価格に占める住宅ローンの割合は年々上昇してきている。住宅金融支援機構のデータによれば、全体の4分の1の世帯が物件価格の90〜100%を変動金利の住宅ローンで組んでいることが分かった。
このように考えると、住宅ローンの支払いが従来よりも家計の大きな負担となった結果、生活苦に陥る「高所得貧乏」が発生していると考えられる。
理想的な物件価格が年収の4倍であるとすれば、23区内の平均的な分譲マンションを購入するには世帯年収が2000万円は欲しいところだ。首都圏に目を向けてみても、主要駅の近くなどの人気エリアであれば、世帯年収1500万円がボーダーラインとなるだろう。
このように考えると、物件価格がバブル期を超えて上がっている今の段階で、世帯年収1000万円程度では、区内の一般的な理想のマンションを購入することはかなりハードな道のりだ。
ここで、生活の拠点を郊外に移したり住宅の質をある程度妥協できれば高所得貧乏化を避けられる可能性が高まるが、そうでない場合は日々の出費もかさむ可能性がある。
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