なぜ吉野家は「炎上3連チャン」をやらかしたのか わずか1カ月半の間にスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2022年05月10日 09時52分 公開
[窪田順生ITmedia]

炎上リスクのある企業

 筆者はこれまで報道対策アドバイザーとして、主に広報部や総務部、時に人事部などコストセンターの人たちと仕事をしてきたのだが、コスト効率化で仕事が雑になっていく人たちを山ほど見てきた。

 なによりも「効率化」が重視されるようになるので、問い合わせ1件に対応する時間や労力はできる限り少なくされる。定型文をコピペしてメールで一括送信したり、トラブル処理も腹を探ったりせずにいきなり結論を突きつけて、サクサクとスピーディーにさばいていったりということが求められていくのだ。

 そのように「効率化」が進んだ管理部門の人たちと話をして感じるのは、人と人とのコミュニケーションが「雑」になっているということだ。相手の話をじっくり聞くような時間は「効率が悪い」と捉えているのか、とにかく「わが社は」「私の立場としては」と自分の考えや都合を一方的に押し付けてくるような人もいる。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

 こういう「雑なコミュニケーション」は、社内では問題ない。オブラートに包まないので相手に真意が伝わりやすく、サクサクと仕事が進む。しかし、外の世界の人間にはかなり違和感がある。大企業としてはあり得ないような、非常識で自己中心的なコミュニケーションに見えてしまうのだ。

 この「効率化の落とし穴」に、吉野家もハマってしまったのではないか。つまり、この2年で「効率化」を急速に進めたことで、その影響をモロに受けたコストセンターの人たちのコミュニケーションが急速に「雑」になっている恐れがあるのだ。それが、「失言炎上3連チャン」を招いているのではないか。

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