業務の取り組み方自体に根本的な誤りがない場合、業務量と勤務時間とのバランスが崩れてしまうパターンは大きく分けて3つです。すなわち「業務量が多すぎる」「人手が足りていない」「仕事能力が不足している」のいずれかです。そんな仕事環境を改善するには、どのパターンに当てはまるのかを確認した上で、適切な対処策を導き出す必要があります。
もし一部の人だけのバランスが崩れているのであれば、その人たちの仕事能力が不足している可能性があります。その場合、教育研修して能力向上を図ることなどが対処策となります。それに対しバランスが崩れている人の方が大半なのであれば、業務体制に無理が生じているということです。対処するには業務量を減らす、または人員を増やすなど、業務体制を改革する必要があります。
ところがNHKのニュースでは、17%が勤怠記録の改ざんを指示されたとあります。改ざんすれば問題が隠蔽(いんぺい)されてしまうので対処策が取られることはありません。実際は残業過多状態だったとしても、改善されないまま放置されてしまいます。
勤怠記録の改ざんを求めたのは学校の管理職、すなわち教頭など教員を指導する立場にある人たちです。子どもたちを教え導く教育現場を取り仕切る人たちでさえ不正行為へと走ってしまう根底には、管理職個人の資質の問題もあるのでしょうが、ゆがんだ組織マネジメントが不正の温床を生み出してしまう弊害も見過ごせません。それは、民間の会社組織でもよく目にする弊害です。
会社で生じる残業の中には、仕事の面白さに目覚めて、寝食を忘れてしまうほど熱中するようなケースがあります。残業は本来会社に指示されて行うものですが、そのように仕事を面白くすることで社員のエンゲージメントを高めていく組織マネジメントが行われているならば、残業になったとしても自発的です。会社としては、社員の意思を尊重しつつも放置することなく、適切にブレーキをかければ残業過多状態は避けられます。
しかし、社員の意思に反してムリさせることを軸に据えた組織マネジメントを行うような会社は、残業過多状態になるほど社員を追い込んでしまいがちです。そんなゆがんだ組織マネジメントが行われると、自らを省みるどころか残業過多状態の体制を維持するために、勤怠記録改ざんなどの不正行為をさせるといったさらなるムリを社員に要求するという発想に陥ってしまいます。
社員にそこまでのムリをさせるには、「支配従属関係」の構築が必要です。支配従属とは、支配者側が圧倒的に優位な力関係を利用して相手を束縛し、意のままにコントロールできる状態です。統制がとれた状態ではありますが、支配従属関係においては支配者側の意思のみが絶対視され、従属する側の意思は無視されます。
その点、納得して指示に従う形で統制が取れている状態とは対極にあるといえます。会社側は社内に威圧感が漂う雰囲気をつくり上げて恐怖心を植え付けるなどして、社員にとって納得できなかったり、良心がとがめるような指示であったりしても逆らわせない、支配従属関係を構築していきます。
そんな支配従属型組織の会社には5つの悪弊があり、この悪弊がボトルネックとなって、不正の温床を生み出すゆがんだ組織マネジメント体制は維持されてしまいます。
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