ビットバンク、三井住友トラストと仮想通貨カストディ参入 鶏が先か卵が先か?金融ディスラプション(1/3 ページ)

» 2022年05月24日 18時55分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 仮想通貨交換業を営むビットバンクは5月24日、仮想通貨などデジタルアセットに特化した信託会社の設立を、三井住友トラスト・ホールディングスと共同で進めていくと発表した。仮想通貨交換業で培ったノウハウを元に、機関投資家や事業会社向けにデジタルアセットを保管・管理する、いわゆるカストディ業務を行う。

 新会社は通称「JADAT」。まずは日本デジタルアセットトラスト設立準備会社として設立し、管理型信託のライセンス取得後、三井住友トラストの出資も受けつつ営業を開始する予定。ビットバンクの廣末紀之社長は「あくまで判断は当局だが、早ければ年内に営業開始したい」とした。

三井住友トラスト・ホールディングスと共同で仮想通貨などデジタルアセットのカストディ業務に参入するビットバンク。写真はビットバンクの廣末紀之社長

鶏が先か卵が先か?

 なぜデジタルアセットのカストディにビットバンクは乗り出すのか。株式や債券などの有価証券では、投資家の代わりにカストディアンが預かり、管理を行うことが一般的だ。紙の株券や債券については、預けることで保管が容易になるほか売買も行いやすくなる。

 一方で、デジタルアセットの場合、セキュリティ確保の面が強い。流出事件が何度も起きたように、「一定の経験とノウハウを持っているところでないと、(仮想通貨を)扱うのが難しい」(廣末氏)のが実情だからだ。

 欧米では、早期にカストディ事業者が整備されたため、機関投資家や運用会社は仮想通貨を組み込んだ運用商品を作ったり、投資したりといった動きが早かった。仮想通貨投資信託大手グレースケールの運用資産残高は、一時ゴールドの最大手ETF「SPDRゴールド・シェア」の額を超えるなど、ほかの投資商品と比較しても遜色ない規模になっている。

 2021年の仮想通貨価格上昇をけん引したのは、こうした欧米の機関投資家だといわれており(関連記事)、仮想通貨は新たな資産クラスとして見られ始めた。

海外では仮想通貨の指数や先物ETFとともにカストディも整備され、機関投資家の参入が進んだ

 一方で国内では、仮想通貨に目を向ける機関投資家はほぼ存在せず、一部の私募ファンドが登場しているに過ぎない。これは「鶏と卵だ」と廣末氏は言う。海外では、デジタルアセットを保有することがポートフォリオ上有用だと見ている機関投資家は多い。カストディが存在し、ユースケースが整い、社会的に受け入れられれば、欧米のように日本でも金融商品化は進んでくる。JADATの設立により、機関投資家が仮想通貨に投資できない理由の1つだったカストディの問題が解決されれば、機関投資家が参入するきっかけになるというのが廣末氏の考えだ。

投資家と取引所の間に入り、保管・管理を行う
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