巷(ちまた)では、現行の消費税10%を8%ないしは5%程度に戻すことを掲げる意見も散見されるが、実は国民負担率に占める消費税の割合はそれほど大きくない。
今月10日に公表された最新の総務省の家計調査年報(2021年度)データを確認しよう。これによると、1人あたりの平均的な生活費は月当たり15万5561円だった。ここから、消費税がかからない家賃等の支出項目3万4918円を引くと、毎月12万643円のおよそ10%となる1万2000円程度の消費税を支払っていることになる。
ここで、消費税を10%から8%や5%に戻すと毎月の負担はどれほど軽減されるだろうか。
消費税を一律8%にした場合、12万643円×8%=9651円となり、月あたり約2400円の負担軽減効果が期待される。消費税を一律5%にした場合は、12万643円×5%=6032円となり、月あたり約6000円の負担軽減効果が期待されるにとどまる。
一方で、給与から天引きされる金額は、収入帯にもよるが社会保険料や所得税・住民税合わせておおよそ20%程度だ。日本の平均年収445万円でいうと、年間89万円もの出費が発生している計算となる。そして、天引きされる大項目である社会保険料、所得税、住民税のうち、最も割合として大きいのが社会保険料で、この部分だけで天引き額の66%を占める割合となっている。
現に、財務省の国民負担率における分類を確認しても「国税」「地方税」「社会保障負担」のうち、やはり社会保障負担が18.7%とトップとなっており、国民生活における社会保障関連の負担が高まっていると考えられる。
1970年の社会保障負担の比率は5.4%であり、そこから3倍以上に負担率が拡大している項目も社会保障負担だけだ。ここから考えると、消費税よりも負荷の大きさや負荷の伸び率が高い社会保障に何らかの対策を講じなければ、今後の国民生活も厳しくなってくることが予想されてくる。
消費税はレシートなどで何かと目にする機会があり、「支払っている」という意識がつきやすい。そのため、消費税を軽減するべきであるという主張は国民の支持を得やすいのだろう。しかし、年々負担が重くなっている社会保険料の負担は天引きされるため、明示的に意識する機会は少ないのかもしれない。
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