ウクライナは輸出量で世界第5位の小麦生産地であり、その大半をオデーサやマリウポリをはじめとする同国の黒海沿岸の港から運び出しているのだが、現在、この海域をロシア海軍がコントロールしているために、収穫したほとんどの量を運び出すことができていない(わずかだが陸路でも可能)。
一部では、勇敢なウクライナの農民たちによって今秋収穫分の作付けのうち、8割から9割が終わったとの報道も出ているが、その前の冬に収穫した小麦がまだサイロや倉庫に眠っていて出荷ができないため、仮にせっかく収穫できたとしても行き場のない穀物を腐らせるだけになる可能性が高い。
日本はウクライナ産の小麦をほとんど輸入していないため、この影響は限定的かもしれないが、ウクライナ産小麦の多くはエジプトなどアラブやアフリカ諸国向けである。このため、小麦の消費国において品不足になると、小麦価格の高騰によって、チュニジアやリビアなどの独裁政権が相次いで崩壊した「アラブの春」(10年〜12年)のように、再び政情不安になる可能性が高まる。
英ガーディアン紙の5月19日付けの記事によると、国連は既にこの最悪のシナリオを十分に認識しており、ウクライナから小麦が搬出されないと世界的な食糧危機に至るとして警告を発しているという。
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